2003 Fiscal Year Annual Research Report
口腔悪性腫瘍術前診断におけるトランスレーショナル・リサーチ
Project/Area Number |
15791157
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大廣 洋一 北海道大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (40301915)
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Keywords | 口腔癌 / アポトーシス / p53遺伝子変異 / アポトーシス / Daxx / 化学療法 / 放射線治療 |
Research Abstract |
一般的に,悪性腫瘍の治療方針は,臨床診断ならびに生検材料による病理診断に基づいて決定される.口腔癌では,手術前に放射線ならびに化学療法を併用し手術の確実性を高める方法が選択されることが多い.しかし,現在の診断技術では手術前に行われる放射線ならびに化学療法に対する感受性の予測は困難であり,治療のタイミングを逸する可能性を示唆している.近年,遺伝子工学的手法の発達により,腫瘍組織の生物学的背景をとらえることが比較的容易に可能となっている. 本研究では,化学療法ならびに放射線療法に対する感受性を左右する因子を明らかにし,結果を患者に還元することを目的とする.約半数以上のがん細胞ではp53の遺伝子に異常(欠失,点変異)があるためにp53に起因する生物学的反応(アポトーシス・細周囲停止・遺伝子修復)が抑制されていると考えられているが,変異の部位と放射線療法ならびに化学療法に対する感受性の相関については不明である.治療感受性とp53の変異を評価するためには,p53の状態のみではなくp21,Bax,Bcl-2といつたp53の下流に存在する蛋白,ならびにDaxxといったp53結合蛋白などを検索し,包括的にp53関連蛋白群ならびにアポトーシス関連蛋白群を評価しなければならないものと思われる. 1.下顎歯肉癌の免疫染色におけるp53,p21の発現について. 現在までに15症例の下顎歯肉癌の生検材料を用いた.p53陽性8例(放射線治療有効6例,無効2例)であった.陰性7例(有効5例,無効2例)で,両群間に有意差は認めなかった(p>0.99).一方,p21陽性10例(放射線治療有効9例,無効1例)で,陰性5例(有効2例,無効3例)で,両群間に有意差(p=0.011)を認めた.現在のところ,放射線感受性にはp53が陽性(変異)であることよりも,p21の発現が重要な予測因子であることがわかった.
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