Research Abstract |
一般的に,悪性腫瘍の治療方針は,臨床診断ならびに生検材料による病理診断に基づいて決定される.口腔癌では,手術前に放射線ならびに化学療法を併用し手術の確実性を高める方法が選択されることが多い.しかし,現在の診断技術では手術前に行われる放射線ならびに化学療法に対する感受性の予測は困難であり,治療のタイミングを逸する可能性を示唆している.近年,遺伝子工学的手法の発達により,腫瘍組織の生物学的背景をとらえることが比較的容易に可能となっている. 本研究では,化学療法ならびに放射線療法に対する感受性を左右する因子を明らかにし,結果を患者に還元することを目的とする. 1.下顎歯肉癌の免疫染色におけるp53,p21の発現について. 15症例の下顎歯肉癌の生検材料を用いて検討した結果,p53陽性8例(放射線治療有効6例,無効2例)であった.陰性7例(有効5例,無効2例)で,両群間に有意差は認めなかった(p>0.99).一方,p21陽性10例(放射線治療有効9例,無効1例)で,陰性5例(有効2例,無効3例)で,両群間に有意差(p=0.011)を認めた.現在のところ,放射線感受性にはp53が陽性(変異)であることよりも,p21の発現が重要な予測因子であることがわかった. 2.術前化学療法併用放射線治療の改善と病理組織学的治療効果 現在,当科で施行している術前治療の治療効果について,生検材料と手術摘出標本を比較検討した.対象症例31例中,放射線治療単独群では,15例中有効例4例(27%),化学療法併用放射線治療群では16例中有効例11例(69%)と有意に化学療法併用群で高い治療効果を得ている.これらの生検材料を用いて,上記と同様の分子を標的に検討を加えている.
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