2003 Fiscal Year Annual Research Report
フッ素除放性修復材料の溶出成分が歯髄細胞の生存シグナルに及ぼす影響
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15791201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菊入 崇 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (10322819)
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Keywords | フッ素 / 細胞活性 / アポトーシス / アポトーシス実行因子 / 歯髄細胞 |
Research Abstract |
フッ素は、様々な方法でう蝕予防に用いられる元素である。しかし、in vitroにおけるフッ素の作用機序とくに細胞内でのシグナル伝達に関しては未知な点が多い。例えば、低濃度のフッ素では細胞増殖に作用するが、逆に高度のフッ素は細胞毒性を示すことがよく知られている。そこで、各濃度のフッ素を歯髄細胞に作用させたところ、1mM以上のフッ素を作用させた場合、細胞死を引き起こす細胞の割合が有意に増加することが明らかになった。作用後の細胞を検討した結果、特徴的な形態変化を呈していること、DNAが断片化していることなどから、アポトーシスを介して細胞死に至ったことが判明した。一方、アポトーシス実行因子であるカスパーゼの阻害剤を高濃度のフッ素を加えた細胞群に対し添加したところ、この細胞死が抑制されることも明らかになった。さらに、各濃度下におけるアポトーシス関連遺伝子の発現を検索したところ、高濃度のフッ素作用では、カスバーゼの上流シグナルであるアポトーシス実行遺伝子Baxの発現が亢進していることが判明した。また、逆に低濃度のフッ素作用ではアポトーシス抑制遺伝子Bcl-2の発現が亢進していることも明らかになった。これらの結果は、フッ素は何らかのシグナルを介して細胞の生存に深く関与していることを示唆するものであった。フッ素とアポトーシスシグナルの関連性について、細胞が産生する一酸化窒素の濃度を測定したところ、フッ素濃度依存的に、一酸化窒素の産生が亢進していた。このことから、一酸化窒素を介したアポトーシスシグナルの存在が示唆された。
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