2003 Fiscal Year Annual Research Report
咀嚼機能回復が高齢者の早期痴保の回復に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
15791254
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嶋崎 義浩 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助手 (10291519)
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Keywords | 高齢者 / 咀嚼 / 痴呆 / ADL |
Research Abstract |
我が国では急速に高齢化が進んでおり、それに伴う寝たきりや痴呆高齢者の増加は大きな社会問題となっている。実際の介護の現場では痴呆高齢者の介護は非常に困難であり、痴呆の予防や早期の回復は介護問題にとって大きな意味を持つものである。本研究の目的は、咀嚼に関わる口腔健康状態と高齢者における痴呆との関連性について調査分析を行い、それと同時に、咬合状態の不良により咀嚼機能の低下した者に対して歯科治療を行うことで、早期の痴呆がどの程度改善可能かについて調べることである。 まず、予備的な調査として高齢者の健康状態の現状について調べるために、某病院の長期療養型病棟に入院中の要介護高齢者・障害者に対して調査を行い、口腔内の状態と全身の健康状態とくにADL(日常生活動作能力)との関連性について分析を行った。高齢者のADLは痴呆や認知能力と非常に関連の強いものであるため、ADLと口腔健康状態との関連を調べることは高齢者における全身の健康に及ぼす口腔健康状態の影響を調べるうえでも有用であると考えられる。その結果、統計学的に有意ではなかったものの残存歯数が少ない者においてADLの状態は悪く、高齢者における咀嚼機能と全身の健康状態との関連を示唆する結果が得られた。近年、要介護高齢者に対する口腔ケアの重要性が広く認識されるようになってきたが、高齢者における口腔健康状態を示す一つの指標である口腔乾燥状態とADLとの関連についても調べたところ、高齢者における口腔乾燥は発熱と関連していることが確認された。以上のことから、高齢者の全身の健康状態には口腔の健康が深く関わっていることが示唆された。今後は、口腔健康状態と痴呆との直接の関連性を調査し、また、咀嚼機能回復のための歯科治療が痴呆の回復に及ぼす影響についても調べていく予定である。
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