2003 Fiscal Year Annual Research Report
我が国の看護学領域に対するジェンダー分析と、それに基づく看護科学試論の作成
Project/Area Number |
15791277
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Research Institution | Niigata College of Nursing |
Principal Investigator |
朝倉 京子 新潟県立看護大学, 助教授 (00360016)
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Keywords | ジェンダー / ケア / 看護 / フェミニズ |
Research Abstract |
本研究の主目的は、看護学領域に対するジェンダー分析を行うことである。3年計画の1年目である今年度は、(1)国内外における看護学の文献のジェンダー分析、(2)看護、ケア、ジェンダー対する看護職者の意識調査(予備調査)を行った。 (1)では、A.国内の看護学領域におけるセクシュアリティ概念の分析、B.国内外の看護学領域においてジェンダー/フェミニズムに言及している文献の分析、2点を行った。Aの結果、我が国の看護学領域で用いられているセクシュアリティ概念は、ジェンダーに関わる理論的パースペクティブとは無関係に定義されていることが明らかになった。Bの結果、看護学領域におけるジェンダー/フェミニスト・パースペクティブは、a.女性の優れた特質や女性文化を強調し、男性との区別をはかる「差異」論が優勢であり、この立場は、1980年代から看護学の主要な学術的流れとなったケアリング重視の看護理論およびケアの倫理学に大きな影響を与えていること、b.米国やオーストラリアの看護学文献には、ポスト構造主義に基づくものが多数あり、「差異」論への批判を展開するとともに、言説分析の手法による新しい看護研究が行われていること、c.看護学の全体論とジェンダー/フェミニスト・パースペクティブの一致を探る研究が行われていることが明らかになった。この結果から、看護学のエンジェンダリング(ジェンダー概念による知の組み換え)に向けて、いくつかの課題が浮き彫りになった。さらに、看護学をエンジェンダリングするにはく既存の二分法や制度を解体し再構築するポストモダン・フェミニズムのパースペクティブが重要であることが示唆されたが、このパースペクティブをどのように看護学に組み込み、再構築するのかという大きな問題が残されている。この研究の中間結果は、現在、学会誌に投稿中である。 (2)では、新潟県内の総合病院に勤務する看護職者360名を対象に、看護やケアに関するジェンダー意識、性差観、自律性に関する質問紙調査を行った。同時に、8名の女性看護職者と1名の男性看護職者を対象に半構成的な面接調査を行った。この結果、多くの看護職者が、看護やケアを「女性らしいもの」と捉えていることが明らかになった。また、看護職者の性差観は、自律性に影響があることが示唆された。今後は、この調査に関する詳細な分析を継続し、質問紙を修正して再調査を行うことが必要である。また、女性看護職者に加えて、男性看護職者を面接調査の対象とし、看護者のジェンダー・バイアスに関する総合的な知見を得ることが必要である。
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Research Products
(1 results)