2004 Fiscal Year Annual Research Report
我が国の看護学領域に対するジェンダー分析と、それに基づく看護科学試論の作成
Project/Area Number |
15791277
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Research Institution | Niigata College of Nursing |
Principal Investigator |
朝倉 京子 新潟県立看護大学, 看護学部・看護学科, 助教授 (00360016)
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Keywords | ジェンダー / ケア / 看護 / フェミニズム |
Research Abstract |
本研究の目的は、看護学領域に対するジェンダー分析を行うことである。3年計画の2年目である今年度は、(1)国内外における看護学の文献のジェンダー分析に基づく看護学試論の精錬、(2)看護、ケア、ジェンダーに対する看護職者の意識に関する調査データの分析および新たなデータ収集、(3)海外学会における情報収集を行った。 (1)では、平成15年度の文献収集と分析により得られた成果を精錬し、2004年5月の第30回日本保健医療社会学会大会にて発表し、さらに修正を加えて2005年2月に「ジェンダーと交差する健康/身体」(明石書店)の第一章として出版した。この論文では、1980年代以降看護学で注目されるケア/ケアリング理論には、女性のすぐれた特質を強調する差異のフェミニズムのパースペクティブがあり、このパースペクティブは性別カテゴリーの社会構築性を認めるものの、男女問の非対称的な関係や権力構造を容認する方向にあるため、看護学においては自らの駆使する概念・理論を自己批判的に検討することが必要であること、また自明とされてきた性別カテゴリーを改編するパースペクティブの導入が必要であることを提言した。さらに、看護がどのように女性専有の職業として確立したのかを歴史的な観点から分析し、女性の職業としての看護の確立が近代の所産であることを明らかにした。 (2)では、第一に、平成15年度に行った質問紙調査のデータを分析した。その結果、6割以上の対象者が「看護を女性らしいもの」と捉えていることが明らかになった。また、検証的因子分析の結果、ジェンダーの視点を取り入れた「看護の専門職化に対する伝統的態度」は「女性性志向」「従属志向」「聖職志向」「反職務志向」の4つの下位概念から構成され、この概念の構成概念妥当性と信頼性が検証された。また、「女性性志向」と「聖職志向」は「性差観」と関連があり、「従属志向」と「反職務志向」は「自律性」と関連があった。さらに、これらの下位概念は、性別や免許の種類などと関連があった。第二に、昨年度から継続している看護職者を対象とした面接調査を実施した。今年度は男性看護職者を対象に、職業体験や生活体験などを包括的に聞き取った。データの収集と分析は来年度以降も続けるが、現段階では次のことが示唆されている。まず、看護の現場では、男性看護師がより困難な仕事を請け負うことが自明のこととされており、これらのジェンダー構造が看護の専門職化を阻むものと推測されること、次に、男性看護師は看護教育および看護の仕事のなかで、「女のレベル」に合わせたり「発言を阻まれる」などの抑圧的な体験をしていることから、看護の現場における男性看護師の主体構築が必要と考えられること等である。 平成17年度は(1)の理論的研究、(2)の実態調査を継続し、看護学のエンジェンダリングの方向性を検討する。
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Research Products
(2 results)