2005 Fiscal Year Annual Research Report
我が国の看護学領域に対するジェンダー分析と、それに基づく看護科学試論の作成
Project/Area Number |
15791277
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Research Institution | Niigata College of Nursing |
Principal Investigator |
朝倉 京子 新潟県立看護大学, 看護学部・看護学科, 助教授 (00360016)
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Keywords | ジェンダー / ケア / 看護 / フェミニズム / 自律性 |
Research Abstract |
本研究の主目的は、看護学領域に対するジェンダー分析と看護科学試論の作成である。3年計画の3年目である今年度は、看護学におけるエンジェンダリング(ジェンダー概念による知の組み換え)の可能性と方向性を探究することを目的とした。そのために、1.海外における情報収集、2.看護学のエンジェンダリングに向けた理論的考察、3.男性看護師調査におけるデータ収集の継続と分析、の3点を行った。その結果を以下に概略する。 1では、米国の大学等の訪問及び情報収集から、看護領域におけるジェンダー分析には、看護師の自律性及の概念を検討することが非常に重要であることが示唆された。さらに、看護やケアの領域は、政治的経済的要因に大きな影響を受けつつ国際的な市場のなかで構築されていることが明らかになった。そのため、目本の看護およびケアの領域を相対化するために、自由貿易協定(FTA)により日本に看護師を輸出しようとしているフィリピン国において、看護に関わる調査および言説収集を行った。フィリピンでの調査の結果、フィリピンでは看護学におけるケア/ケアリング概念を看護師輸出のために戦略的に使っており、またそのような戦略が国際的な看護労働市場におけるジェンダー・バイアスを強化している可能性が示された。従つて、日本の看護界がケア/ケアリング概念をジェンダー分析なしに使い続けることは、看護および看護学の発展にとってマイナスであること、看護学のエシジェンダリングを行う場合には、国際的な経済要因をもふまえて、総合的に行っていく可能性があることが示唆された。 2では、看護学及び周辺諸領域のケア概念の検討を、昨年度に引き続きさらに緻密に行った。その結果、ケア概念を考察する際には、ケア提供者の自律性を含めて考えることが必要であるが、これまでの看護師・ケア提供者の自律性研究では、看護師が「主体的」に意思を決定し、看護行為を選択し実施することが大前提とされているが、その主体とはいかに構築されているのかという問いは解決されていないことが明らかになった。また、これらの研究では、看護師の意思決定に先立ち選択肢が用意されていないにもかかわらず、限られた選択肢の中で看護師が意思決定することを看護師の自律性として説明しており、看護師の尊厳が全く考慮されていないことが明らかになった。従って、今後、看護および看護学のエンジェンダリングのために、看護師の主体や尊厳という観点をふまえた検討が必要であることが示された。 紙面の都合で、3の結果は省略する。なお、1,2,3はすべて著書あるいは論文にて公表する予定である。
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Research Products
(3 results)