Research Abstract |
研究目的:本研究の目的は介護老人保健施設(以下老健)から病院へ退所している要介護高齢者の退所理由から老健における看護課題を明確にすることであった。 研究結果概要:調査(1)(平成15年度実施)では資料調査を行った,調査概要については平成15年度報告書にまとめた。本年度実施予定の分析結果で明らかになったことは,ショートステイ利用者を除外した場合,老健における入退所経路は病院からの入所者50.9%,家庭からの入所者29.0%,病院への退所者45.1%,家庭への退所者19.4%。平成15年厚生労働省発行の「介護サービス施設・事業所調査」の入退所者経路では病院からの入所者45.3%,家庭からの入所者45.7%,病院への退所者38.5%,家庭への退所者39.2%と報告されており,ショートステイ利用者を含めた統計では,明らかに老健から病院へ退所する人の割合が低く見積もられていた。ショートステイ利用者を除外した場合,病院から家庭への機能回復を目指すための老健において実質的な家庭復帰割合が19.4%とかなりの低値を示し,この結果は施設内看護の課題を裏付けるための重要な基礎データになると考えられた。また,病院への退所理由は,発熱や呼吸器・循環器・消化器・脳血管の障害による身体異常の発覚によって突発的に搬送されたケースがもっとも多く,次いで骨折等の負傷であった。計画的または予防的な観点での入院は少なかった。つまり,看護師の日頃の医療的なアセスメント力が退所に影響を及ぼす可能性が考えられた。これらは第9回日本老年看護学学会にて報告した。施設内看護には,医療的なアセスメント力がもっとも重要な課題であるという提言を前述の学会にて報告したところ,会場から現場の看護師にアセスメント力を期待するような課題は難しいという指摘があった。そこで,本年度は,要介護高齢者に対する面接調査(調査(2))に追加して,施設内看護師を対象とした調査を実施した(調査(3))。調査(2)の結果から,老健に入所中の要介護高齢者が認識する看護師の役割には,「健康管理と疾患への対処者」という側面が大きく,介護職員とは異なる位置づけがなされていることが分かった。しかし,病院と老健との看護師比較については,老健は病院の看護師に比べ「疾患への知識・対応・対処が不十分だと思う」が,「老健という場所は,健康な人が入ってくる場所でもあるので仕方がない」と医療的な対応に対する諦念観が要介護高齢者にあることが窺えた。また,要介護高齢者は,看護師と介護職員を見分けながら生活し,また区別できる格好や表記を望んでいた。つまり,老健の要介護高齢者は日常的な健康管理を看護師にかなり期待してはいるが,看護師が期待通りに機能できているとは認識されていないという結果であった。調査(3)は愛知県内の全老健に在職中の看護師に「看護師が重要だと考える施設内看護」について自記式質問紙法で実施した。現在は,回収段階であり(H17.3.9現在,回収率59.7%)今後,分析を行い,さらに,3つの調査結果を総合した分析を行う。
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