2003 Fiscal Year Annual Research Report
未治療・医療中断の精神障害者と家族に対する保健師の判断及び援助に関する研究
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15791364
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
新村 順子 財団法人東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 研究員 (90360700)
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Keywords | 未治療 / 医療中断 / 家族援助 / 保健師 / 地域精神保健福祉活動 / 地域精神医療 |
Research Abstract |
今年度は、主に地域精神保健福祉領域、精神看護領域での、未治療・医療中断者の援助についての文献検索から、インタビューの構造、および分析の方向性についての検討を行い、未治療・医療中断の精神障害者・家族への援助について、都内公的機関に勤務する保健師9名より10事例についてのインタビューを実施した。インタビュー対象となった保健師の平均経験年数は約19年であった。語られた事例の特徴は、10名のうち未治療が6名、医療中断者が4名、疾患名は全員が統合失調症、女性が6名、平均年齢は40.7歳(21歳〜61歳)、推定発病年齢からのインタビュー時点までの平均年数は11.6年(3年〜20年)、医療中断者4名のインタビュー時点までの入院回数は平均3.7回であった。また9事例が家族と同居、他の家族員も統合失調症である等なんらかの精神科的なエピソードを有する家族は7件であった。ほとんどの事例において保健師は本人及び家族に対して援助を行っていた。 これらの事例が、未治療・医療中断となっていた理由をインタビュー内容から分析すると、(1)本人に精神症状や問題行動があっても、家族とのコミュニケーションがある程度保たれており、他人に迷惑をかけることがなく、今のままでも「なんとかやっていける」と家族が感じている。(2)かなりの精神症状や問題行動があっても、家族のうちの誰かが、本人の生活が破綻しないようになんとか補っている。(3)本人だけでなく家族各々が生活上困難な障害や問題を抱えており、本人の精神症状や問題行動が大きくても、キーパーソンとして相談行動を起こすことができない、の3点が挙げられた。またこの様な状況になる背景としては、(1)以前の入院体験で本人・家族が医療に良い感情を持っていない、(2)以前の病院、保健所、警察等への相談体験から、相談機関は自分の家族のニーズには応えてくれないと感じている、(3)本人や家族に統合失調症の症状や治療について偏った認識がある、(4)家族同士が問題解決の方向に動いていけない関係性がある、(5)家族にも精神疾患や認知の障害を持つ人がいる、などが挙げられ、保健師がこれらの理由・背景を捉えながらどの様に援助を展開しているのか等について、次年度分析を継続していく予定である。
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