2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15F14408
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
野田 昌晴 基礎生物学研究所, 統合神経生物学研究部門, 教授 (60172798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LIN CHIA-HAO 基礎生物学研究所, 統合神経生物学研究部門, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 体液恒常性 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物が生存していくためには、体液の塩濃度を一定に保つ必要がある。このため、動物は体液のナトリウム(Na)濃度と浸透圧とを常時モニターする仕組みを獲得したと考えられる。我々は、これを担うNaレベルセンサーがNaチャンネル、Naxであり、その検出中枢が脳の脳室周囲器官にあることを明らかにしてきた。一方、水の摂取量や尿量の調節を担う浸透圧センサー分子については、多くの研究者の長年の努力にも関わらず、未だに解明されていない。脳室周囲器官は脳の中で例外的に血液脳関門を持たない脳領域であり、脳室にも接していることから、血液及び脳脊髄液のモニタリングに適している。我々は、脳室周囲器官に特異的に多く発現している分子の中に、体液恒常性の制御に重要なセンサー分子が含まれていると考えた。本研究では、脳室周囲器官に特異的に発現する分子を探索し、浸透圧感受性を示す分子を見出すことを目的とする。 これまでに次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析により、脳室周囲器官である脳弓下器官及び終板脈管器官に特異的に発現している分子を多数同定していた。これらの中には体液センサーとしての機能が期待できるチャンネル分子やイオン輸送に関わる分子が24個存在していた。そこで、まず、これらの分子の全長cDNAのクローニングを行った。次に株化細胞に発現させ、細胞外液のNa濃度上昇や浸透圧変化に対して応答するかをイオンイメージング法によって検討した。その結果、細胞外液のNa濃度上昇や浸透圧変化に対して応答するセンサー分子の候補を4つ同定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析により、脳室周囲器官である脳弓下器官及び終板脈管器官に特異的に発現している分子を多数同定していた。これらの中には体液センサーとしての機能が期待できるチャンネル分子やイオン輸送に関わる分子が24個存在していた。そこで、まず、これらの分子の全長cDNAのクローニングを行い、発現ベクターにサブクローニングして株化細胞に発現させ、Western blot法と免疫細胞染色法により、蛋白質の発現を確認した。次にそれぞれの分子を発現した株化細胞が、細胞外液のNa濃度上昇や浸透圧変化に対して応答するかをイオンイメージング法によって検討した。その結果、細胞外液のNa濃度上昇や浸透圧変化に対して応答し、脳室周囲器官において浸透圧センサーとして機能し得る分子を4つ同定することに成功した。 このように研究実施計画通り、脳室周囲器官において浸透圧センサーとして機能し得る分子の同定に成功しており、本研究課題はおおむね順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、同定した浸透圧センサーの候補分子について、実際に生体内で浸透圧センサーとして機能しているかについて検討する。具体的には、まず、これらの遺伝子に対する人工マイクロRNAを発現するアデノ随伴ウイルスを作製する。次に作製したアデノ随伴ウイルスをマウスの脳室周囲器官に局所的に注入して標的遺伝子の発現を抑制し、脳室内へ高張液を注入した時に誘発される飲水行動への影響を調べる。
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