2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15F15001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斉藤 明 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80170489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HE HUANHUAN 東京大学, 人文社会系研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 大乗掌珍論 / 清弁 / バーヴィヴェーカ / 日本古写経 / 玄奘 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の博物館、美術館、および複数の寺院に所蔵されるバーヴィヴェーカ(清弁、490-570頃)作・玄奘訳『大乗掌珍論』の諸写本を校合して同論の信頼に足る校訂本を作成し、その上で、引用ないし論及されるインド哲学諸学派の学説を分析・検討する作業を通して、詳細な訳注研究を完成させることを目的とする。 本年度は根津美術館、金剛寺他に所蔵される『大乗掌珍論』の複数の写本を複写により入手し、大正蔵を含む他の諸版本とも校勘のうえ、新たな校訂テキストを作成する作業を行い、ほぼ完成させた。 これと並行して、研究代表者と研究分担者は、同論の内容をバーヴィヴェーカ自身による他の著作『中観心論』、同注釈『論理炎論』、および『中論』注釈『般若灯論』を比較考察しながら分析し、8月26-28日に東京大学で開催された国際ワークショップ "Candrakirti vs. Bhaviveka"においてそれぞれ研究発表を行った。研究分担者はまた、6月28日から7月2日にバンコクで開かれた国際サンスクリット学会で"Turning the Wheels"と題する関連発表を行った。 なお、これとは別に研究代表者は、11月6日に開催された東方学会・秋季学術大会のシンポジウムにおいて「インド仏教思想史に見る言語論的転回と認識論的転回ー<認識>をめぐる瑜伽行・唯識派と中観派のせめぎ合いー」と題する関連発表を行い、研究分担者は「玄奘、清弁、陳那ー从"簡別立宗"談起」『世界哲学』(2015-4), pp.151-159(CSSCI)と題する関連論文を、本研究の中間成果として公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象となる『大乗掌珍論』に関する日本古写経の複写はほぼ入手し、予定どおり大正蔵本を底本にした上で、他の版本との校勘をも踏まえて信頼に足る校訂本をほぼ完成させた。また、これらの作業の中間的な成果報告を国際学会および国際ワークショップで発表し、研究論文にも結実させることができた。これにより、次年度は本格的な内容分析と詳細な訳注研究を行う環境が整い、本年度の研究は順調に進捗したと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度作成した校訂本をもとに、本格的な内容分析と詳細な訳注研究を行う予定である。本書は、訳文の厳密さに定評のある玄奘訳であるが、文の切れ目がときに不明瞭であることに加え、批判対象となる瑜伽行派等の仏教内の他部派の諸学説、インド哲学諸学派の多くの学説が批判的に論及されているため、本格的な訳注研究と詳細な内容分析が俟たれてきた。本年度の成果をもとに、次年度はぜひこの研究課題に挑みたいと考えている。
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Research Products
(11 results)