2015 Fiscal Year Annual Research Report
言語類型論から見た日本語諸方言におけるトーンと母音の相互作用
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15F15005
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
窪薗 晴夫 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・構造研究系, 教授 (80153328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
POPPE CLEMENS 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・構造研究系, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | アクセント / 母音 / 方言 / 音韻理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の出発として、参考文献の方言資料と以前行った諸方言の方言調査で収集したデータを基に、従来のトーンと母音の関係についての研究の問題点を指摘した上で、韻律構造に基づいた分析の可能性を追求した。その研究成果を国内と国外の学会・研究会で発表した。この研究によって、韻律構造以外に分節音の内部構造の役割を無視できないことが明らかになったので、次にこの問題に取り組んだ。具体的には、同じ分節音に見えるものでも、その内部構造が違い得るという可能性を追求した。この問題を理論的な観点から論じる原稿を書いたが、次年度に研究会・学会で発表し、修正してから海外の雑誌に投稿する予定である。なお、以上の研究で明らかになったことも参考にしながら、日本語の方言アクセントに関する論文を二つ投稿したが、その一つはすでに公開されている。 日本語以外の言語におけるトーン・ストレスと母音の関係に関する研究も行った。具体的には、ロシア語における母音弱化にみられるトーンと韻律構造の役割に関する研究と、英語における母音の音質と音量に関する研究を行った。後者の研究の最初の成果はすでに論文にまとめて国内で投稿したが、掲載が確定している。 以上の理論的・類型論的な研究以外に、次年度に行う研究に必要な新しい方言資料の収集も始めた。具体的には、能登半島でアクセント調査を行い、データを入力し、アクセント体系を記述した。この研究の成果は、次年度の前半に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に二つの方言を現地で調査する予定であったが、以前行った諸方言の調査で収集したデータの新たな分析とその理論的・類型論的な意義に関する通言語的な研究は当初の計画以上に時間がかかった。そのため、能登半島でしか方言調査ができなかった。しかし、その一方、以前から資料を持っていた日本語諸方言の類型論的研究と日本語以外の言語に見られる「弱母音」に関する通言語的な研究は当初の計画以上に進んでいるので、全体的には研究が順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に、前年度に始めた北陸諸方言の記述と理論的研究を続けるとともに、少なくとももう二つの方言を現地で調査する予定である。具体的には、北陸地方のもう一つの方言と、北陸諸方言と地理的に離れた瀬戸内海周辺の方言を調査する予定である。記述調査で音声資料を収集してから、アクセント体系を記述し、本年度に研究対象にした諸方言との共通点・相違点を考慮しながら、音韻理論・類型論の視点から分析する。 本年度には日本語諸方言と日本語以外の言語に見られる「弱母音」の共通点・相違点について色々と明らかになったが、未発表の研究成果がまだ少なくないため、次年度には研究成果をより多くの研究会・学会などで発表し、論文にまとめる予定である。
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Research Products
(4 results)