2015 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者に対するコミュニティーケアに関する国際比較研究-根拠ある政策立案に向けて-
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15F15011
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
野口 晴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (90329318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SANDOVAL GARRIDO FELIPE 早稲田大学, 政治経済学術院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ICD-10-CM / EUROHIS-QOL / SAGEデータ / 家族ケア / 社会人口学的状況 / 社会経済学的状況 / ロジット分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、メキシコ、南アフリカ、ウガンダの3カ国における50歳以上の中高齢者を対象として、世界保健機構により収集されたパネルデータ、"Study on Global AGEing and Adult Health (SAGE)"の個票データを用い、各国のマクロの経済・財政状況や制度の違いを考慮に入れつつ、当該調査対象者が家族ケアの提供者となった場合の、18歳未満の子ども、及び、18歳以上の成年者の生活の質と健康にどういった影響を与えるかに関して、実証的観点からの国際比較を行う。SAGEが対象とした地域は、医療・介護・福祉などの社会保障サービスを公的に供給するための社会資源が稀少な地域であると考えられる。こうした資源制約の厳しい社会における家族ケアやコミュニティ―ケアのあり方を検証することは、日本をはじめとする持続可能な制度設計を模索する先進地域に対して有益な示唆を与えることとなるだろう。 平成27年度においては、南アフリカ及びウガンダのデータの整備と分析を行った。南アフリカについては抗鬱指標であるICD-10-CM(Major dipressive disorder)、ウガンダについては生活の質指標であるEUROHIS-QOLをアウトカムとする。うち、南アフリカについては、人口学的・社会経済学的属性を共変量として統御した上で、major exposureである家族介護の効果について多変量解析を行った。分析の結果、(1)18歳未満の子どもについては、家族介護が彼らの生活の質や精神面での健康状況を統計学的に有意に改善する一方、(2)18歳以上の成年者については統計学的に有意な効果が観察されなかった。ウガンダについては、横断面データの整備を終了し、記述統計量を算出したところであり、今年度において、本格的なパネルデータの整備と分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、"Study on Global AGEing and Adult Health (SAGE)"の個票データを用い、さまざまなアウトカムを想定し、家族ケアの効果について、定量的に実証することが目的である。研究の第1段階として、パネルデータであるSAGEデータを整備する必要があり、当初は、データ整備に1年以上を要すると予測していたが、データ整備が10ヶ月ほどで終了したため、平成27年度において、いくつかの国に対する分析を開始することが出来た。現在までに下記の通り、3本の研究論文の執筆を進めているところである。(1)The Relation between Informal Care Provision and Major Depressive Disorder among Rural Elderly People in South Africa;(2)Factors Related to Quality of Life (QoL) of Older Persons from Rural and urban Sites in Uganda;(3)Depression among Older Caregivers Living in Households Affected by HIV in Rural District of South Africa。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、第1に、現在進行中の研究を、2016年11月に米国・ニューオリンズにて開催されるGerontological Society of America(GSA)、及び、2017年1月にサンフランシスコで開催されるInternatoinal Association of Gerontology and Geriatrics(IAGG)にて発表予定である。第2に、執筆中の3本の研究論文を、Geriatrics and Gerontology InterantionalやMental Health and Aging等の国際的な専門誌に投稿し、出版を予定している。第3に、南アフリカとウガンダに加え、インドやベトナムに関する分析を開始することを予定している。したがって、今年度の予算については、本研究の成果を専門誌に投稿する際の英文校正に対する謝金(30万円)を申請する。また、本研究で得られた知見をGSA、IAGG、日本国際医療保健学会において発表するための国内旅費(10万円)、及び、海外旅費(40万円)を計上する。
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Research Products
(3 results)