2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15F15019
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木村 正人 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70263358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VAN MEURS PATRICK 金沢大学, 数物科学系, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-10-09 – 2018-03-31
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Keywords | 転位 / 塑性 / 変分法 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,結晶構造内の格子欠陥である転位(転位線,dislocation)の密度分布およびダイナミクスに関する数学的研究を行った.これまでの研究実績に基づき,平成28年度は次のような数学的成果を得た. 1.壁のある状況下での転位線の密度分布は,スケーリングの方法に応じてに多種多様な挙動を持つことを数学的に示した.また,そのいくつかについて,変分法を用いたアプローチで,転位密度の精密な挙動を解析することに成功した.成果の一部を研究論文として発表したほか,いくつかの国際会議で講演を行った. 2.転位線の密度分布の極限がある第1種フレッドホルム型積分方程式の解で表されることを示し,その解析を行った.第1種フレッドホルム型積分方程式は典型的な非適切問題として知られ,解析が困難な場合が多いが,本研究では関数解析的アプローチと,厳密解の表示を用いて,解の正則性についての結果を得ることに成功した. 3.アレン・カーン型のエネルギーと弾性エネルギーを組み合わせるアイデアを用いて,転位線のダイナミクスを記述するフェーズフィールドモデルを提案した.本モデルは,転位芯とピーチケーラー力を自然に取り込み,勾配系としてエネルギー散逸構造を有するもので,これまでのモデルにあった多くの問題点を解決している.また簡略化した場合において,その数値計算を行い,定性的に自然な転位の振る舞いが観察されることを示した.成果の一部は研究論文として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変分法的アプローチを用いて,転位密度の挙動に関する新たな数学的評価が多く得られており,そのいくつかは論文として発表済みまたは論文準備中である.また,転位ダイナミクスを記述する数理モデルの提案とそのシミュレーションも行っており,研究方向が拡大されている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果を,数学的に丁寧に証明のチェックを行い,論文の形でまとめて発表するとともに,国際研究集会などに積極的に参加し研究発表を行う.また,本研究中で転位密度の挙動に関連して浮上した新たな研究方向として,第1種Fredholm型積分方程式の解析や,転位線のダイナミクスを記述するフェーズフィールドモデルの解析にも取り組む.
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Research Products
(6 results)