2016 Fiscal Year Annual Research Report
振電バンド観測による光合成タンパク質の1分子振動分光
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15F15032
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 穣 東北大学, 理学研究科, 准教授 (20300832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JANA SANKAR 東北大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-10-09 – 2018-03-31
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Keywords | 光化学系I / ブリンキング / エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成タンパク質の1つである光化学系Iタンパク質の単一分子分光をこれまで行ってきた。室温では、本来の光反応である電荷分離反応が効率よく進むため、極低温で単一分子分光を実施することが必要であった。これまでの研究から、蛍光強度が揺らぐブリンキングという現象を光化学系Iについて初めて見出してきた。ブリンキングの頻度について、詳細な研究を続けてきたが、当初は反応中心色素であるP700をあらかじめ酸化することでブリンキングが抑えられる傾向があるような研究結果が得られていたが、多くの実験を繰り返してデータ数を増やしていくと同時に、情報理論を駆使したさまざまな解析手法を試して蛍光強度揺らぎを定量的に扱う方法を検討してきた結果、むしろP700の酸化はブリンキングを増強する働きがあることも分かってきた。極度の乾燥状態などの光合成ができない環境下においては、酸化されたP700が光化学系I内に生成してアンテナ色素が吸収した光エネルギーを積極的に、励起エネルギーを熱に変換して、不必要な光化学反応が起こって活性酸素種などの有害物質が生成するのを防ぐ機構が知られている。P700の酸化還元状態に依存して、蛍光強度揺らぎの性質が変化するという観測は、こうした植物の防御機構とも関連していて、極めて興味深い現象である。上記の研究成果については、オランダで行われた国際光合成会議においてポスター発表し、多くの研究者と活発な議論を交わした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度途中に対物レンズが損傷する事故に見舞われたため、当初は計画が遅れ気味であった。2016年度初めに新しい対物レンズが調達されて以降は、順調に研究は進捗しており、遅れを取り戻しつつある。現在、収集された多くのデータを様々な手法による解析を進めている段階で、これまでの成果を論文にまとめている。また、既にブリンキング頻度の温度依存性の実験も始めている。まだまだデータ数が少ないが、温度の上昇にともなってブリンキング頻度が若干上昇しているデータがとれつつある。一方、当初計画していた液体He温度での実験に関しては、それ以前の液体窒素温度の実験により上記のような興味深い成果が挙がってきているため、後回しとなっておりまだ手付かずの状態である。この点に関して、計画よりやや遅れている、との自己評価とした。 また、並行して励起スペクトルを測定できるように光学系を更新した測定系を構築しており、既に予備的な実験が可能な段階となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ブリンキングの温度依存性の実験を続ける。ブリンキングを定量的に議論するためには、ある程度の数の単一分子からのデータが必要となるため、多くの実験を重ねてデータ収集を行っていく。同時に、当初計画にあった液体He温度での実験にも着手する。液体He温度では、スペクトルの線幅がさらにシャープになるため、振動バンドの観測により単一分子振動分光が可能となると期待している。今後はぜひこの実験に着手する予定である。 一方、励起スペクトル測定に関しても、興味深い結果が得られることが期待されるため、継続して計画を進めていく。現状の実験系において、波長スキャン部分をLabViewによりPC制御するようにして、効率よく励起スペクトルを測定できるようにして、実際の実験を行う。
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Research Products
(5 results)