2015 Fiscal Year Annual Research Report
2重鋼管CFT柱を利用したセルフセンタリング合成構造骨組の設計規範の確立
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15F15066
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 正愛 京都大学, 防災研究所, 教授 (00207771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SKALOMENOS KONSTANTINOS 京都大学, 防災研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | セルフセンタリング / 充填鋼管コンクリート柱 / 鉄骨筋かい |
Outline of Annual Research Achievements |
先の東日本大震災では、現行の耐震設計で定める地震力を超える力が起こりうること、構造躯体が健全でも非構造部材の損傷により事業継続性が低下すること、が大きな問題となった。これらへの対応として、「設計で想定する地震力を超える力に対して、崩壊に至るまでの余力の確保」と、「地震後の早期復旧を可能にする損傷限定型構造の開発」で挙げられる。中低層建築物の崩壊までの余裕度を決定づける因子は、大変形で大きな鉛直力を負担する下層部柱の変形能力にある。また、地震後の復旧を迅速化する仕組みとして、建物の残留変形の減少をめざす「セルフセンタリング機構」がある。本研究では、下層部柱の変形能力向上による崩壊までの余裕度増加と、セルフセンタリング機構の実現を同時に図ることを目的とし、2 重鋼管CFT柱を利用したセルフセンタリング合成構造骨組と、中低層建築物に多用される筋違いにセルフセンタリング機能を持たせた鉄骨造骨組の構築を目的とする。 超高強度鋼を用いた2重鋼管CFTを開発し、それが有する塑性変形能力を定量化するための精密な数値解析を既往の実験結果を参照しつつ整備し、一連の解析結果から、内側鋼管がもつ塑性変形能力向上効果、超高強度鋼を用いることによる弾性限変形の増加に対する定量情報を獲得した。またこれらの知見をまとめて超高強度鋼を用いた2重鋼管CFT柱の復元力モデルを構築した。筋違いにセルフセンタリング機構を持たせるために、意図的に初期偏心を与えた偏心筋違い(BIE:Braces with Intentional Eccentricity)を新に開発し、その妥当性を一連の構造実験から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2 重鋼管CFT柱を利用したセルフセンタリング合成構造骨組の提案については、2 重鋼管CFT柱に超高強度鋼を用いることによって高い弾性限界変形の確保が可能となり、セルフセンタリング実現のための基盤が整った。ほぼ予定通りの成果が得られたところで、次年度は2重鋼管の内側にPC鋼棒を挿入しそこにプレストレス力を作用させることによって、骨組全体としてのセルフセンタリングを確保するための仕組みの開発に取り組む予定である。 筋違いにセルフセンタリング機能を持たせる鉄骨造骨組の提案については、通常の筋違いに初期偏心を加えるだけで、筋違いの初期剛性、降伏耐力、最大耐力が自在に調節でき、さらにセルフセンタリングの鍵となる降伏変形限界の増加が見込めることが明らかになった。所定のもくろみを超える効果が確認されるとともに、その復元力特性の定量化に向けて必要な実験情報も獲得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は2重鋼管の内側にPC鋼棒を挿入しそこにプレストレス力を作用させることによって、骨組全体としてのセルフセンタリングを確保するための仕組みの開発に取り組む。またこの骨組にエネルギー消費性能を持たせるために、梁端部にダンパーを配することとし、ダンパーの強度とプレストレス力とセルフセンタリングの関係を明らかにしたうえで、提案骨組の耐震設計手順を整備する。 筋違いのセルフセンタリング機能に関しては、偏心量、細長比と降伏耐力、最大耐力、最大体力時変形との関係を明示できる設計式を導出するとともに、当該筋違いを配した鉄骨造骨組に対する一連の地震応答解析から、セルフセンタリングの達成度合いを確認する。さらにこの骨組の特徴として挙げられる初期剛性の調節能力に着目し、初期剛性に応じて変化する柱への変動軸力を陽に算定する手法を開発する。さらに、この変動軸力を適切に制御することによって基礎構造の設計・施工が大幅に改善することを、基礎における引き抜き力という観点から検討し、提案骨組が有する特徴と利点を提示する。
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