2015 Fiscal Year Annual Research Report
貴金属ドープ半導体光触媒反応による高効率太陽光エネルギー変換材料の開発
Project/Area Number |
15F15073
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真嶋 哲朗 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00165698)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LOU ZAIZHU 大阪大学, 産業科学研究所, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2015-07-29 – 2017-03-31
|
Keywords | 光触媒 / 太陽光エネルギー変換 / 貴金属ナノ粒子 / ナノプラズモン発光 / 単一粒子発光顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光エネルギー変換系として、特に、可視光および近赤外光吸収で誘起される水の分解による水素生成が注目を集めている。しかしながら、プラズモン励起による電荷分離の効率が低いため、太陽光エネルギー変換系として十分とは言えない。プラズモン励起ナノ光触媒において電荷分離効率を上げ高効率化を実現するためにはその機構解明が必要不可欠である。しかしながら、通常の生成物分析による手法でこの課題に取り組むには限界がある。そこで本研究では、時空間高分解蛍光顕微鏡による単一粒子レベルの光触媒反応の解析法を使用して詳細な反応機構を解明することとした。まず、プラズモン励起ナノ光触媒である、大きさ100 nm程度の金ナノ粒子、および数nmサイズの白金ナノ粒子を修飾した金ナノ粒子を合成し、光励起によって生成する電荷分離、電荷移動について調べた。単一粒子蛍光顕微鏡を使用して、プラズモン励起による発光挙動を単一粒子レベルで測定し、プラズモン励起による金ナノ粒子内での、ホット電子の生成、移動、分離、再結合過程について調べた。また、様々な形状、大きさの金ナノ粒子を合成し、それらがプラズモン励起に及ぼす効果について調べた。具体的には、約140 nmの金ナノ三角形を合成し、これに白金粒子を修飾させたところ、三角形の頂点、三角形の側面、三角形全体に白金ナノ粒子が修飾された3種の構造の白金―金複合ナノ粒子が生成した。これらは、可視光、近赤外光照射による水からの水素発生の触媒活性を示した。一粒子発光測定から、金のプラズモン励起による発光は白金によって消光されるが、面内プラズモン(DSPR)が主に関係していること、金上に生成したホット電子が白金に移動して水素生成が起こること、がわかった。FDTD計算によっても、三角形の側面に白金ナノ粒子を修飾すると強いプラズモン増強電場によって電荷分離が促進されることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高効率太陽光エネルギー変換材料の開発を目指して、貴金属および2種の貴金属からなる複合ナノ粒子のプラズモン励起によるナノ光触媒について、特に、金および白金―金複合ナノ粒子のプラズモン励起による発光を単一粒子蛍光顕微鏡で観測し、その電荷分離、電荷移動について明らかにした。なお、上述の金三角形の頂点、金三角形の側面、金三角形全体に白金ナノ粒子が修飾された3種の構造の白金―金複合ナノ粒子の中で、金三角形の側面に白金を修飾した場合に、水素発生能がもっとも効率的に起こることを見出した。この構造においては、金と白金の境界面が多く存在し、強いプラズモン電場増強のために、電子移動と電荷分離が促進され、他の構造の白金―金複合ナノ粒子に比較して、より優れた水素発生触媒作用を示すことがわかった。これらの知見についてはすでに論文にまとめ、国際ジャーナルに投稿中である。 さらに、金三角形ナノ粒子の合成と触媒反応の検討において、金ナノ三角形のエッチング過程の観測に成功した。金ナノ三角形がエッチングされるとその形状は丸みを帯びた三角形へ、さらにナノ円盤へと変化する。この変化を、単一粒子毎の発光でその場観測したところ、発光強度と形状は金ナノ粒子の幾何構造と対応することがわかった。次にこれら様々な幾何構造の金ナノ粒子の側面に白金ナノ粒子を修飾し、これを光触媒とした、プラズモン励起による水からの水素生成について調べた。白金を側面に修飾した金ナノ粒子の発光の消光過程は面内プラズモンが関係していること、金上のホット電子が白金に移動して水素発生能を示すことがわかった。FDTD計算により、白金を側面に修飾した金ナノ粒子の形状は、丸みを帯びた三角形のほうが、三角形よりも触媒能に優れていることがわかった。この結果についても、現在論文化を行っている。このように、本研究は次々に重要な結果が得られていて、順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述の金三角形ナノ粒子のエッチング過程のその場観測に関する研究結果をまとめ、論文として投稿する。次に、最近特に注目されている可視光励起と電気化学反応を組み合わせた光電気化学的水分解による水素発生に関連して、金ナノ粒子および白金―金ナノ粒子の光電気化学触媒反応を単一粒子蛍光顕微鏡によってその場観察し、光電極上でのナノ粒子の触媒作用により、水分解が起こり水素を生成する反応の詳細な機構を明らかにする。これまでに光電気化学触媒反応の単一粒子レベルでの研究報告例は少なく、電圧印加による電荷分離、電荷移動、電荷再結合や、界面反応に関して、新たな知見が得られると考えられる。 プラズモン励起光触媒である貴金属ナノ粒子光触媒反応の単一粒子レベルの研究に加え、貴金属(金、白金など)を半導体(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物)に修飾した複合体についても、光励起によって生成する電荷分離、電荷移動について明らかにする。これらの複合体におけるプラズモン励起光触媒の反応機構として、Type I, II, IIIの3つの機構(ホット電子による価電子帯への電子注入、欠陥サイトへのエネルギー移動など)が提案されているが明確になっていない。プラズモン場で発生する電場によって、電荷分離がどのように促進されるのか?照射光や半導体の電場によって影響されるのか?複数の金属ナノ粒子を修飾した半導体の場合、加工法や選択的励起が光触媒反応効率にどのように影響するのか?また、外部電場や熱電場がプラズモン励起光触媒反応効率にどのように影響するか?などを明らかにする。これらの結果から、太陽光エネルギー変換の高い効率を有する光触媒の開発に関する指針を得る。
|
Research Products
(2 results)