2015 Fiscal Year Annual Research Report
高選択的なバイオケミカルス/バイオ燃料生産を目指したリグニンの熱分解分子機構解明
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15F15101
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂 志朗 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (50205697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MOHAMMED YUSSUF MOHD ASMADI 京都大学, エネルギー科学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-10-09 – 2018-03-31
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Keywords | バイオマス / 熱分解 / リグニン / 分子機構 / 反応制御 / ケミカルス |
Outline of Annual Research Achievements |
木質バイオマスは、エネルギーベースで世界の一次エネルギー需要の実に6倍もの量が毎年光合成により生産されている再生可能な資源である。また、その利用により発生するCO2は再びバイオマス生産に用いられることから、ネットとして大気中のCO2を増やさないカーボンニュートラルな資源でもある。したがって、化石資源の枯渇する将来において木質バイオマスからケミカルス及びマテリアルを生産し利用する方法論を今から準備しておくことは重要である。このような背景から本研究課題では、木質バイオマス中に20~30%含まれるリグニンに特に着目した研究を行う。
木質バイオマスはセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主要構成成分として含むが、結晶性のセルロースミクロフィブリルをリグニンとヘミセルロースからなる非結晶性のマトリックスが取囲む複層構造を持つ。また、リグニンとヘミセルロースがセルロースよりも50~100℃程度低温側で熱分解されることから、リグニンとヘミセルロースは密接に影響を及ぼしながら木材中では熱分解されることが予想される。本年度は、熱重量分析(TGA)により熱重量減少挙動を比較することで、マトリックスの熱分解がリグニンの熱分解により支配されており、その挙動が針葉樹と広葉樹で異なることを明らかにした。さらに、この点を詳細に検討する目的で、木材(針葉樹のスギと広葉樹のブナ)よりリグニンあるいはヘミセルロースを除去した試料及びリグニン画分を調製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究により、リグニン-ヘミセルロースマトリックスの熱分解挙動が針葉樹と広葉樹で異なり、その相違がリグニンの熱分解により支配されている可能性があること示唆された。本結果は今後の研究の方向性を決める上で重要な示唆を与える。すなわち、木材中ではリグニンとヘミセルロースが互いに影響を及ぼしながら熱分解されていることが示唆され、これらについて詳細な分子機構を検討するための動機づけとなった。さらに、そのための試料として、特定の成分(リグニンあるいはヘミセルロース)を除去したサンプル及びリグニン画分の調製を既に完了している。このような理由で、本研究課題は順調に進捗しているものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に準備できなかったものにヘミセルロース画分がある。ヘミセルロースの化学構造は針葉樹(主にキシラン)と広葉樹(主にグルコマンナン)で異なり、また、アセチル基を広葉樹キシランが多量に含んでいることが特徴的である。したがって、これらの特徴を維持したまま木材よりヘミセルロース画分を抽出することをまず試みる。また、既に調製済みのリグニン画分についても針葉樹リグニンが主にグアイアシル(G)核からなるのに対し、広葉樹リグニンはG核とともにシリンギル(S)核を含む点で異なる。そこで、これらの化学組成の違いに特に着目しながらマトリックス中のリグニンとヘミセルロースの熱分解機構について検討を進める。なお、ヘミセルロースはウロン酸を含むが、天然の木材ではこのウロン酸に塩として無機カチオンが取り込まれているものと考えられている。したがって、これらのウロン酸塩の熱分解挙動および無機カチオンの影響などにも着目する。また、必要に応じて適切なモデル化合物を利用する。
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Research Products
(1 results)