2016 Fiscal Year Annual Research Report
Coexistence and Major Conflicts between Continental Europe and Anglo-American Models of Legal Education: The Case of Law Schools in Japan
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15F15309
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 勝造 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40152136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RENAUDIE MAXIME 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | 法学教育 / 法曹養成 / 大陸法と英米法 / 法社会学調査 / 比較法 / 法的思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)日本とフランスにおける法学教育,法曹養成について比較法および法社会学的手法を用いた比較研究を実施した. (2)フランスにおいては2007年の大学改革により学際的かつ批判的研究への重点移動が実現し大学は大きく変容した.そして,フランスの法学部のその例外ではない.しかし,伝統主義的な傾向のために,法学教育における改革は手続き的な面を中心としたものとなっている.そして法律上の曖昧性を明瞭化することに重心が置かれている.これらはフランスの法実務家,法学者,などへの面接と,訪問しての資料収集の成果である. (3)他方,日本の法学教育は,アメリカ合衆国型の大学院レベルの法科大学院制度の導入,司法試験改革など大規模な根本的改革がなされたが,司法試験合格率の低さ,法科大学院希望者の減少による定員割れの蔓延などが生じ,適性試験の事実上の廃止,多数の法科大学院の閉鎖,予備試験経由の司法試験合格者の多数化など,必ずしも順調で期待通りの進捗をしていない.これらは,日本の法学研究者や法実務家等との面接や,各種資料の収集によってあとづけている. (4)以上の比較についてのより深い分析として,法学教育,司法試験の内容についての比較,とりわけ,伝統的大陸法の法律学の伝統の中で安定しているフランスと,大陸法の伝統の中に英米法の伝統を混ぜ込んだ日本との比較による比較法的検討を実施することが出来た.大陸法の伝統を固守し続けるフランスの法学教育と法曹養成が安定性を維持しているのに対し,大陸法と英米法という必ずしも整合的でないミクスチャーを取り入れたために様々な制度的,内容的な困難が日本では生じている. (5)以上の研究成果は,英語並びにフランス語の著作として発表し,また単行本として出版することになっている.このような研究の手法と分析枠組みおよび得られた知見は世界への情報発信に値する貴重なものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
パリ大学等の図書館での資料収集や研究者,実務家への面接調査等によってフランスにおける大学改革が法学部および法学教育に与えている影響をエヴィデンス・ベースで明らかにすることが出来,他方,日本の法学者や法実務家への面接調査等,および英文資料の渉猟によって日本の法学教育と法曹養成制度の実情と課題を明らかにすることが出来た.以上のように今年度の調査研究は順調に進捗しているだけではなく,法学教育の背景にある大陸法と英米法の思想的伝統の比較にまで進み,深い比較法的理論と実証的知見にまで到達することが出来た.フランスでは大学改革の大波の中でも法学部は伝統的な大陸法の思想を固守することで安定性を維持できている.他方日本では,伝統的な大陸法に,思想的背景の異なる英米法を混ぜ込んで法学教育と法曹養成制度を改築したために様々な困難に直面することとなった.このように法哲学的素養(法哲学で博士号をフランスで取得)に裏打ちされたパースペクティヴで,さらに法社会学的方法の採用(面接等の実証研究),比較法の手法という学際的手法を融合させて構築することができた.このような研究の枠組み,分析,知見は,先行研究に見られない,また,世界的に見ても画期的でユニークな研究成果であり,これを達成できているから.
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Strategy for Future Research Activity |
残る約半年弱の期間は,これまで収集した資料とデータの分析を通じて理論と知見をさらに精緻化しつつ,英文およびフランス語の論文として集大成して,ジャーナル等の論文,あるいは単行本として刊行し,世界へ向けて情報発信を行う.
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Research Products
(2 results)