2016 Fiscal Year Annual Research Report
レーザーによる細胞刺激とサイトカインーアパタイト共沈の複合効果による歯槽骨再生
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15F15331
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大矢根 綾子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (50356672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ARPUTHARAJ JOSEPH NATHANAEL 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | リン酸カルシウム / コラーゲン / スキャホールド / 骨再生 / 水酸アパタイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、歯槽骨再生治療への応用を指向し、リン酸カルシウム過飽和溶液を反応場とするアパタイト層の低温形成技術の開発を進める。具体的には、リン酸カルシウム過飽和溶液を反応場とするアパタイト形成技術を基盤技術とし、(1)パルスレーザープロセスの利用、(2)コラーゲン足場材料(スキャホールド)との複合化、ならびに(3)骨形成等に影響する生理活性物質との複合化について検討する。 平成28年度は、(1)パルスレーザープロセスの利用、ならびに(2)コラーゲンスキャホールドとの複合化について、昨年度に続いて検討を進めるとともに、(3)についても基礎検討を開始した。(1)では、歯科用材料から実験用平板基材を作製し、同基材の表面にアパタイト層を形成させるための適切なレーザー照射条件(波長、フルエンス、照射時間)を明らかにした。(2)では、昨年度に構築した吸引脱気システムを用い、リン酸カルシウム過飽和溶液を反応場として、3種類の多孔質コラーゲン系スキャホールドの表面および内部にアパタイト層を形成させた。得られたアパタイト層形成スキャホールドを連携先である北海道大学大学院歯学研究院に提供し、ラット動物実験を実施した。アパタイト層を形成させたスキャホールドをラット皮下に埋入した結果、いずれのスキャホールドについても、未処理のスキャホールドに比べ、より多くの細胞がスキャホールド内部にまで侵入したことから、組織再生用足場としての有用性が示唆された。(3)では、生理活性物質として、骨形成促進・抗菌効果の期待されるフッ素を選択した。基材表面にフッ素担持アパタイト層を形成させるための過飽和溶液条件について検討し、過飽和溶液中のフッ素濃度がアパタイト層のフッ素担持量ならびに形態に与える影響を明らかにした。 以上の成果の一部を国内学会で発表するとともに、フルペーパーとして国際的学術論文誌に投稿した(審査中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね交付申請書に記載の計画の通りに研究を進め、連携先である北海道大学大学院歯学研究院との共同研究も順調に進捗している。前年度より検討を開始している上記(1)および(2)については、複数の学会発表を行っている。(2)については、前年度1種類のコラーゲンスキャホールドへのアパタイト層形成技術を確立したが、平成28年度には計4種類のコラーゲン系スキャホールドについて検討を進め、溶解性の高い1種(過飽和溶液中で崩壊)を除く3種類のコラーゲン系スキャホールドへのアパタイト層形成技術を確立した。作製されたスキャホールドの機能評価を連携先である北海道大学大学院歯学研究科において進め、論文投稿にまで至っている(審査中)。(3)についても順調にデータが取得されつつあり、平成29年度中に1件以上の学会発表を予定している。 以上の状況から、現在までのところ本研究はおおむね順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、歯槽骨再生治療への応用を指向し、リン酸カルシウム過飽和溶液を反応場とするアパタイト層の低温形成技術の開発を進める。具体的には、リン酸カルシウム過飽和溶液を反応場とするアパタイト形成技術を基盤として、(1)リン酸カルシウム形成促進効果の期待されるナノ秒レーザープロセスの利用、(2)コラーゲンスキャホールドとの複合化、ならびに(3)骨形成等に影響する生理活性物質との複合化について検討する。 今後も、北海道大学大学院歯学研究院との連携体制を継続して、今年度の検討結果に基づき上記(1)(2)(3)の高度化ならびに、細胞や動物による機能評価を進めていく。予備評価の結果から選定される一部の試料については、透過電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型X線分光分析装置(EDX)などによる精密解析も実施する(産総研内のつくばイノベーションアリーナ(TIA)推進センターに依頼予定)。得られる成果をまとめて、学会および論文誌上で発表していく。
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Research Products
(3 results)