2016 Fiscal Year Annual Research Report
生理活性物質の連続フロー全合成を実現する新規固相担持型不斉触媒の開発
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15F15337
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50195781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BORAH PARIJAT 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-10-09 – 2018-03-31
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Keywords | 不均一系触媒 / 不斉合成 / フロー合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の有機合成化学において、医薬品や化成品等の有用な化学物質の供給は非常に重要な研究テーマであり、特にその供給プロセスでは、出発原料から目的物までの変換過程を高効率化することが強く求められている。これまでの精密化学品の合成では、目的物までの多段階反応を一反応ごとに仕込み&後処理、精製を行い(バッチ反応)、それぞれの段階で中間体を得て次段階に移行している。しかし、これらの操作は時間的な問題、安全性等の問題から、多大なエネルギーとコストを必要としてきた。これに対してフロー反応システムを用い、幾つもの反応カラムを連結させることにより多段階反応を連続的に行う合成法は、これらの問題を解決できることから、理想的な有機合成法であるといえる。本研究では、医薬品等の光学活性な精密化学品の高効率的合成を実現するための連続フロー反応手法の開発を目指し、高活性・高立体選択性を示す固相担持型不斉触媒を開発し、不均一系での連続フロー反応システムへ適用することを目標に検討を行っている。本年度は、高分子固定化キラルカルシウム触媒を用いるグリシンシッフ塩基のα,β-不飽和エステルに対する不斉1,4-付加反応について昨年度に引き続き検討を行い、高分子担体の性質を変化させることにより反応の不斉選択性が向上することを明らかにした。一方で、アルミニウムを基盤とする固相強塩基触媒の開発も継続し、フッ化セシウムにて処理した酸化アルミニウムを用いるグリシンシッフ塩基のα,β-不飽和エステルに対する1,4-付加反応が、副反応を抑えつつ広い基質一般性をもって高収率、高立体選択的に進行することを見いだした。また、塩基性部位の構造の詳細な検討を行い、その活性に関する新たな知見を得た。現在、このフッ素処理した酸化アルミニウム触媒を活用する触媒的不斉合成反応の実現を目指して検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、高分子固定化キラルカルシウム触媒を用いる不斉反応において、その不斉選択性を改善する新たな方策を見いだした。また、フッ化セシウムを用いる酸化アルミニウム固体塩基触媒を開発し、広い基質一般性をもった立体選択的反応を開発できた。これらの成果は、今後の連続不斉フロー反応を開発するための基礎になりえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は高分子固定化キラルカルシウム触媒をさらに改良し、高い不斉選択性を実現する。一方で、酸化アルミニウム固体塩基触媒を不斉配位子と組み合わせることにより、固相不斉塩基触媒の開発を行っていく。それらの成果を基に、医薬品等の合成中間体をフロー合成にて供給する研究を行い、医薬品のフロー全合成につなげる。
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Research Products
(1 results)