2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of tunable aptamers derived from natural riboswitches for making genetic control devices
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15F15345
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
杉本 直己 甲南大学, 先端生命工学研究所, 教授 (60206430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RODE AMBADAS 甲南大学, 先端生命工学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | リボスイッチ / アプタマー / FMN / 相互作用 / 分子クラウディング / エンタルピー / エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究において、フラビンモノヌクレオチド(FMN)を制御分子とするリボスイッチのアプタマードメイン(FMNアプタマー)が、分子クラウディング環境下でFMNとの結合親和性を高めることを明らかにした。さらに、マグネシウムイオン存在下とPEG200による分子クラウディング環境下では、同程度の結合親和性を示す溶液条件においても、結合に伴う熱量変化(エンタルピー変化)が大きく異なることが示された。そこで当該年度では、蛍光標識したFMNアプタマーを作製し、RNase T1による限定分解を行う事で高次構造の解析を行った。その結果、マグネシウムイオン存在下では、結合の前後においてFMNアプタマーの構造に大きな変化は見られなかった。一方で、PEG200による分子クラウディング環境下では、FMNが結合することでFMNアプタマーが高次構造を形成することを示唆する結果が得られた。この結果より、分子クラウディング環境下でのFMNアプタマーとFMNとの結合はinduced fitタイプの結合様式を示し、マグネシウムで予め高次構造を形成させた場合の結合様式とは異なることが考えられる。天然のリボスイッチは、RNAの構造変化に基づいて遺伝子の発現を制御するため、分子クラウディング環境下でのinduced fitによる相互作用がその機能に重要であると考えられる。本研究成果は現在、論文投稿準備中である。 また当該年度は、競合するRNA高次構造の平衡に対する生体分子の影響に着目し、二重鎖構造と四重鎖構造の平衡を解析した。癌遺伝子に由来するmRNAの配列を用いて解析したところ、癌細胞内での発現が増強するtRNAの存在下では、RNAが二重鎖構造を有意に形成することを明らかにした。つまり、リボスイッチと似たような機構で、tRNAが制御分子として癌遺伝子の発現を調節している可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、FMNアプタマーとFMNとの結合親和性が分子クラウディング環境下で増大する要因を解析する研究を進めた。RNAの構造変化により遺伝子の発現を制御するリボスイッチの機能と相関させ、リガンドの結合前後におけるFMNアプタマーの構造を生化学的に解析した。その結果として、リボスイッチを対象とした研究で高次構造を誘起してリガンドとの結合親和性を高めるために使用されるマグネシウムイオンとは異なり、分子クラウディングの環境下ではRNAの高次構造が誘起されなくてもリガンドとの結合親和性が増大することが示唆された。この成果は、分子クラウディング環境にある細胞内のリボスイッチの機能化機構を理解するうえで重要な情報を与えるものと考えられる。 さらに当該年度では、二重鎖構造と四重鎖構造との間で平衡になりうるRNA構造に対するtRNAの影響を解析する研究を進めた。tRNAについては、原核生物内において、アミノアシル化されたtRNAがリボスイッチの制御分子として作用し、mRNAの構造を変化させることで遺伝子の発現を制御することが知られているが、真核生物内で類似の機構が存在しているかどうかは明らかでなかった。当該研究課題にて、蛍光シグナルの変化を用いた解析を行った結果、tRNAが二重鎖構造と四重鎖楮との平衡を二重鎖構造側にシフトさせることが明らかとなり、その結果としてmRNAからのタンパク質の発現量が増大することも示された。この研究成果は、化学分野を代表する国際学術誌である、独国化学会のAngewandte Chemie International Edition誌に掲載され、掲載号の中裏表紙に取り上げられた。このようにリボスイッチと同様、特定の生体分子によるRNAの構造変化を介した遺伝子の発現調節の可能性を癌遺伝子を用いて示すことができ、本研究は当初の計画以上に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
リボスイッチの高次構造に対する分子クラウディング環境の影響を定量的に明らかにしていく。これまでは、熱力学的な解析を主に研究を進めてきた。これまでの研究成果から、分子クラウディング環境におけるリボスイッチのアプタマードメインとリガンドとの相互作用がinduced fitに基づく結合様式であることが示唆されている。そこで、今後の研究課題としてinduced fitによる相互作用の速度論的な解析を進めていく。熱力学的、速度論的な解析を行う事で、細胞内の遺伝子発現過程でのリボスイッチの機能化に関する詳細な機構を明らかにできると考えられる。その後、細胞内の分子クラウディング環境下でも機能する遺伝子発現の制御デバイスを人工的に構築していくことを目指す。 一方で、癌細胞内での発現が増強されるtRNAが二重鎖構造と四重鎖構造の間での平衡反応を二重鎖構造側にシフトさせ、遺伝子の発現にまで影響を与え得ることが本研究から明らかになりつつある。そこで、このような遺伝子発現の変動がtRNAという細胞内に普遍的に存在するRNA分子で起こり得るのかどうかを実際の細胞実験系を用いて検討することも今後の研究展開に加える。
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Research Products
(8 results)