2015 Fiscal Year Annual Research Report
可視光駆動型燃料電池における高性能プラズモン増強電極触媒酸化の開発
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15F15346
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真嶋 哲朗 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00165698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHU MINGSHAN 大阪大学, 産業科学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | 可視光応答型光触媒 / 太陽光エネルギー変換 / 水素発生 / 電荷移動 / 黒リン |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽エネルギー変換において、光触媒を使用した水の分解による水素発生は最も注目されている研究課題である。現在まで、二酸化チタンなどの典型的半導体のほとんどは広いバンドエネルギー(>3.2 eV)を持つので、光触媒の活性化のためには紫外光の照射が必要である。太陽光に含まれる紫外光は5%以下であるのに対し、可視光は48%、近赤外光は44%に達する。したがって、一般の半導体光触媒では太陽光の内使用できるのは5%以下しか含まれない紫外光のみで、90%以上の可視光や近赤外光を利用することはできない。そこで、紫外光から可視光、近赤外光の広い波長にわたる太陽光の全体を利用できる光触媒の開発に向けて多くの研究がなされてきた。 本研究では、可視光駆動型光触媒反応の開発を目的とし、今年度は、2次元(2D)材料であるは黒リン(black phosphorus, BP)について、可視光および近赤外光照射による光触媒反応性を見出した。BPは電子工学、光電子工学、センサーなどの分野で非常に重要であるが、最近、材料科学の分野でも新たな注目を集めている。BPの最も優れた性質の一つは,紫外から可視、近赤外光の領域に渡って効率的に光吸収することである。このことから、BPは広帯域の太陽光を吸収できる効率的な光触媒となり得る可能性がある。我々は研究開始から半年間の期間で、2D構造のBPナノフレークを近赤外光応答型光触媒とする水素発生について調べてきた。まず、超薄膜のBPナノフレークの簡単な合成法を確立した。得られた超薄膜BPナノフレークを可視光および近赤外光応答型光触媒とする水の分解による水素発生について調べた。その結果、BPナノフレークを、還元型グラフェン(RGO)と白金ナノ粒子と複合させた複合ナノ構造体を触媒として使用し、可視光および近赤外光を照射すると、水が分解し、水素が効率よく発生することを初めて見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
黒リン(black phosphorus, BP)ナノフレーク薄膜を塩基性N-メチル-2-ピロリドン(NPM)溶媒による剥離法によって作成した。この薄膜の厚さは2.4から5.2 nmで、4-10層のリン原子層から構成されている。このBPを近赤外光触媒として使用したところ、水の分解が起こり、水素が発生することを見出した。BPに、還元型グラフェン酸化物(reduced graphene oxide (RGO))と白金ナノ粒子を共存させ、可視光(>420 nm)および近赤外光(>780 nm)の照射によって水素が生成し、量子収率はそれぞれ1.1% and 0.1%であった。また、808-nmレーザー光の照射によっても、水素の生成が確認された。フェムト秒レーザーフラッシュフォトリシスを使用した過渡発光測定によってBP蛍光寿命を測定し、BP-RGO-Ptのナノ光触媒においては、BP励起状態がPtおよびRGOによって消光されることが確認された。この消光は電子移動消光によると考えられ、BPラジカルカチオンの生成が示唆されるので、フェムト秒過渡吸収測定を行ったが、BP基底状態の吸収のために、BPラジカルカチオンの生成は観測されなかった。以上の結果から、RGOと白金ナノ粒子は、それぞれ電子媒介剤、助触媒として機能していることがわかった。可視光および近赤外光照射下において、BP が励起さら、BP励起状態のPtおよびRGOへの効率的電子移動消光が起こり、Pt上の電子により水が還元されて水素が生成することが示唆された。現在、BP-RGO-Ptのナノ光触媒における界面電荷分離と電荷移動について、単一粒子蛍光顕微鏡を使用して単一粒子レベルでの解析を試みている。これらの結果は、早急に論文にまとめ数ヶ月内に投稿する予定である。このように、本研究は次々に重要な結果が得られていて、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、多くの半導体が水の分解による水素発生の光触媒として開発されてきた。しかしながら、水素発生の量子収率が極端に低いのが現状である。これは、電子―ホール再結合過程が優先的に進行することにより、この過程を抑制するために、ホール捕捉用の犠牲試薬を添加し、また、白金などの貴金属ナノ粒子を助触媒として使用して、水の分解による水素発生の光触媒反応を起こすことができる。高価な白金の使用は、水の分解による水素発生の光触媒の実用化、工業化における大きな問題であり、解決すべき最重要課題となっている。すなわち、高価な貴金属を使用するのではなく、安価で安定・安全な助触媒を見出し、しかも高効率的な水素発生の光触媒反応の開発が求められている。そこで、我々は、BPとのナノ複合化が可能な、白金以外の安価で安定・安全な助触媒を探索する。その過程において、フェムト秒レーザーフラッシュフォトリシスなどの速度論的測定方法や、単一粒子蛍光顕微鏡を使用して単一粒子レベルでの解析法を駆使して、BPと電荷移動媒体、助触媒との界面の電荷分離、電荷移動についての詳細を明らかにし、反応条件の最適化を図る。これらBPナノ複合体の可視光および近赤外光照射による光触媒反応に関する一連の研究において、電荷分離はどのようにして促進できるのか?複合体の形状、照射光波長などが、光触媒反応効率にどのように影響するのか?などを明らかにする。これらの結果から、太陽光エネルギー変換の高い効率を有する光触媒の開発に関する指針を得る。
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Research Products
(2 results)