2016 Fiscal Year Annual Research Report
高靭性ダブルネットワークゲルの変形・破壊メカニズムの解明
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15F15348
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
グン 剣萍 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (20250417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CUI KUNPENG 北海道大学, 先端生命科学研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | ゲル / 小角散乱 / 放射光 / ダブルネットワーク / イオン結合 / 異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、強靭なダブルネットワークゲル、およびその強靭化原理を応用して創製された各種強靭ゲルの強靭化メカニズムを解明することを目的とする。本年は、強靭性と自己修復性を示し、医療用材料としての応用が期待されている両性イオン性ハイドロゲル(PAゲル)に注目し、その構造解析による強靭化メカニズム解明と力学物性向上を目指して研究を行った。本年度の研究成果は以下の2点に大別される。 (1)PAゲルのイオン結合の強度・密度の制御による、内部構造と力学物性のコントロール:PAゲルは、アニオンとカチオンの共重合体であり、内部に様々なスケールのイオン結合を有する。放射光小角X線散乱測定により、PAゲル内部にはアニオン・カチオンの化学種に応じて数十nm~数µmのスケールの疎密構造が存在することが分かった。本疎密構造は、イオン結合によるポリマーの凝集に伴う相分離に由来する。さらに、ゲル内部のイオン結合の密度を増大させると、疎の部分が消滅して内部構造が均質化することが分かった。この均質化したPAゲルは非常に高性能であり、強靭、高弾性、および100%の自己修復性を達成した。 (2)PAゲルの伸長による、内部構造と力学物性のコントロール:PAゲル内部のイオン結合を、初期歪を加えた状態で形成させることにより、より密なイオン結合を形成させ、力学物性を向上させることに成功した。また(イオン結合を形成させた後の)PAゲルに対し、SPring-8における高輝度光源を活かして小角X線散乱と延伸機を組み合わせ、延伸によるPAゲルの内部構造のその場観察を行った。本結果を基に、延伸に伴う内部構造の変化のモデルを作成した。今後、力学物性との相関を検討する。本研究の一部は既に論文として発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、構造解析による高強度ゲルのメカニズム解明である。上に述べたように、我々は既にPAゲルについて、延伸に伴う構造変化に関するモデルを提唱した。またSPring-8および上海の放射光X線ビームラインにおける測定も予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
a) PAゲル、DNゲルに対する放射光小角X線散乱と延伸の同時測定と、力学物性との相関解明。2017年度の成果に引き続き、放射光による構造と力学試験の同時測定を行い、各種ゲルについて両者の相関関係を探る。 b) PAゲル、DNゲルに対するクリープ試験。材料のクリープ挙動は、負荷がかかった材料の破壊時間に対応している。本研究では、PAゲル、DNゲルのクリープ試験を行い、化学種や外部環境がクリープ挙動、材料寿命、破壊挙動に与える影響を探る。
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Research Products
(7 results)