2016 Fiscal Year Annual Research Report
金属絶縁転移に伴う熱特性変化を応用した宇宙機多機能熱制御デバイスの創成
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15F15378
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長野 方星 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10435810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PARK DAEIL 名古屋大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | 金属絶縁体 / 宇宙 / 熱制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の可変放射率特性を持つペロブスカイト物質であるLSMO (LaSrMnO3)に、可変熱伝導特性を持つメソポーラス物質を(SBA-15)混合して放射率、比熱等を測定した。メソポーラス物質であるSBA-15は、水熱合成法を使用して製作し、TEM分析により、最適なメソポーラス構造であることを確認した。その後、SBA-15にLa、Sr、Mnとクエン酸を混ぜて、乾燥、高温焼成してLSMO/ SBA-15材料を作製した。粉末状態のLSMO/ SBA-15をバルク形態で作るために、ハンドプレスと高温電気炉を利用して600度で製作した。放射測定結果を見ると、純粋なSBA-15の場合、低温では約 0.9、高温では約0.8程度で測定温度が増加するにつれて放射率が減少することを確認した。その後LSMO/ SBA-15を1100度で焼成して測定を実施した。その結果低温領域では約0.8、高温領域では0.9で反対の傾向を示した。 原因を調べるためにTEM分析を実施したところ、大きな違いを確認した。焼成温度が1100度である場合、小さなパーティクルがSBA-15全体的に分散されていることを確認した。これにより、600度以下の低温では、LSMO結晶構造が完全に形成されていないため、LSMO特性が表れないと考えられる。また、蓄熱特性を確認するためにDSCを使用して比熱を測定したところ、0度付近でピークが発生していることを確認した。分析の結果、このピークは、SBA-15のナノポアに存在する0000固体の水であり、測定前に十分に高温乾燥をさせて再測定をしても、同じ結果を示した。上記の結果を分析してみると、SBA-15のナノポアの固体形態の水を利用すれば蓄熱での使用が可能であると判断される。以上これらの2つの結果を総合すると、可変放射率と蓄熱特性を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本機能を実験的に実証できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究で得られた材料の作製及び熱物性計測を短時間で且つ正確に検討するため、次に示すような内容を研究を実施する。まずはじめに、材料を単純焼結法でバルクを作製するには長時間を要求し、かつ空隙の発生、表面の粗さなど測定に影響を及ぼす恐れが考えられる。そこで、今回はSPS装置を用いて短時間で均一である試料を作製を試みる予定である。その後、熱拡散率測定装置は温度依存性データを細かく得る必要があるため、測定を短時間で可能にする方法を模索する。また、既存に多く使用されてペロブスカイト物質であるLSMOの代わりに新しいマンガン系PrBaMnO3(以下 PBMO)を作製し、測定する予定である。既存のPBMOの場合、温度の増加に伴う可変熱伝導率特性と蓄熱特性を論文を通じて確認を行った。しかしながら、PBMOの相転移ピークは-150度の低温領域で起こるので、宇宙船の熱マネジメントデバイスには適していないことがわかる。そのためPrとBaをAサイトとしたペロブスカイト物質であったPBMOのPrとBaの代わりに他の遷移金属のLa, Caなどをドープした更なる材料を探索する方向を考えている。これはペロブスカイトマンガン酸化物のドープ物質、ドープ量の違いにおける熱物性の変化を確実に見られることで格子振動[フォノン]に基づく理論的な接近を可能にし、最終的には最適な熱物性温度可変性能を出せるドープパラメータを探索できる見込みがあると考えられる。 最後に測定されたデバイスの熱物性値を利用して、簡単な熱モデルを作成し、Thermal desktop(TD)を使用して解析を実施する予定である。更には熱解析結果の検証のために、熱真空と熱サイクルなどの宇宙環境模写試験を通じて検証する予定である。
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