2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15F15402
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Research Institution | 国立研究開発法人農業生物資源研究所 |
Principal Investigator |
菊地 和弘 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 動物発生分化研究ユニット, 上級研究員 (20360456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
APPELTANT RUTH 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 動物発生分化研究ユニット, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | アポトーシス / ギャップ結合 / 卵丘細胞 / 卵母細胞 / ブタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アポトーシスの発生を非侵襲的にモニターできる手法を確立し、その解析を行うこととした。それに先立ち、アポトーシスに関連する卵丘細胞と卵のギャップ結合、特に透明帯を外側から貫通して囲卵腔に到達するtranszonal projections (TZP)について、卵を超低温保存前後での消長をモニターした。ガラス化冷却がTZPの数を減少させるが卵丘細胞の膨潤に影響を及ぼさないこと、このことは、ガラス化冷却ならびにその後の加温によって数を減少させるが、大部分のTZPが機能を有して残存し、体外成熟培養の間に卵丘細胞の膨潤を十分に引き起こすこと可能であること、すなわち、ガラス化冷却をおこなってもギャップ結合を減少させないことを明かにした。さらに、TUNEL染色、アポトーシス関連遺伝子発現をqRT- PCRさらにアポトーシス検出キット等により調査ため、その予備実験に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標である、アポトーシス検出のためのTUNEL染色、関連遺伝子発現や検出キット等による調査については予備実験にとどまったものの、ガラス化冷却時のギャップ結合の消長に関しては貴重な結果を得ることができた。これらの結果はフランスで開催され第16回国際家畜繁殖学会で口頭発表に選出され評価されており、次年度につながる成果が得られたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度では、H27年の実験を継続する。すなわち、アポトーシスの発生状況をTUNEL染色、アポトーシス関連遺伝子発現をqRT- PCRさらにアポトーシス検出キット等により調査する。また、細胞内カルシウムイオンの動態はFura 2AMを細胞にロードしそれを蛍光測光することで確認する。次に細胞内カルシウムの制御に関しては、カルシウムフリーの培養液を開発する、さらにカルシウムイオンのキレート剤であるBAPTA-AMやミトコンドリア親和性の高い阻害剤であるCyclosporin Aを利用する計画である。また、アポトーシスの阻害剤であるE-64等の効果も確認することを継続する。年度の半ばからは新たに卵の修復法を開発する。ガラス化冷却後の卵に対し、前述の解析の知見に基づいたアポトーシスを低減させる体外成熟培養系を開発する。さらに、細胞操作による手法を確認する。このために、本研究グループで開発した細胞質小片融合法(centri-fusion法)を確認する。具体的には、ガラス化冷却しない体外成熟卵を2回の遠心処理をすることにより細胞質小片を作出し、これをガラス化冷却・加温した卵に細胞融合することで、操作卵の受精・発生能を新たに付与し良質の初期胚を得ることを目指す。 H29年度には、安全な卵の超低温保存法として、クローズド保存系の開発を行う。現行の方法(マイクロドロップ法)としては、卵を含んだガラス化液を直接液体窒素中に投入しガラス化冷却を行うため、液体窒素中に浮遊する細菌やマイコプラズマ等に接触し、加温後に卵はこれらの影響を受ける可能性がある。そこで、液体窒素に直接触れないsuperfine open pulled straw (SOPS)やクライオトップを活用するとともに、場合によっては新たなデバイスを考案し感染可能性を低減させる。マイクロドロップ法と比較し、ガラス化の効率、加温後の受精・発生能を確認する。
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