2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15F15410
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 将行 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70322998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OVADIA BENJAMIN 東京大学, 薬学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | 合成化学 / ラジカル反応 / 生物活性分子の設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
【概要】炭素ラジカル種を介した炭素-炭素結合(C-C)形成反応は、高化学選択的であり、中性条件下進行するため、天然物および有用有機化合物の合成において強力かつ実践的な手法になりうる。我々はカルボン酸から容易に調製可能なα-ヘテロアシルテルリドが酸素存在化、トリエチルボランの作用により脱カルボニル化反応を伴って求核的性質を示すα-ヘテロ炭素ラジカルを生じることを見出している。そこで、Ovadia研究員は、本ラジカル反応を用いたC-C形成プロジェクトに参画し、平成27年度はヘテロ芳香族アルキル化反応を遂行した。ヘテロ芳香族系のアルキル化は、合成化学的および薬理学的に有意義な分子の網羅的な調達を可能とする重要なC-C形成プロセスである。したがって本研究課題の実現がもたらす波及効果は有機合成化学のみならず生化学分野にとっても大きい。 【方法・結果】種々の含窒素芳香族化合物(レペジン、ピリジン、カフェインなど)を炭素ラジカル種受容基質として用いた際、反応は進行しなかった。そこで、含窒素芳香族化合物を2通りの方法で活性化し、ラジカル反応に供した。すなわち、化学量論量のカンファースルホン酸でプロトン化し、塩とした。これに対し種々のα-アルコキシアシルテルリドから生じさせたα-アルコキシ炭素ラジカルを作用させた結果、ポリヒドロキシアルキル化された含窒素芳香族化合物を中程度から高収率(最大80%)で得られた。また、触媒量(10 mol%)のLewis酸による含窒素芳香族化合物の活性化にも成功し、ラジカル条件下、対応するポリヒドロキシアルキル化された含窒素芳香族化合物を得ることに成功した。 【結論】Ovadia研究員は化学量論量のBronsted酸または触媒量のLewis酸を用いて含窒素芳香族化合物を活性化することで、ラジカル条件下での含窒素芳香族化合物のポリヒドロキシアルキル化を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱一酸化炭素反応を伴うラジカル反応条件下、含窒素芳香族化合物(レペジン、ピリジン、カフェインなど)のポリヒドロキシアルキル化の実現に成功した。半年間での本成果の達成は、当初の研究計画通りと言える。一方、窒素以外のヘテロ芳香族化合物のポリヒドロキシアルキル化については、未だ検討の余地を残している。Ovadia研究員は、生産性と適応性と独創的を高いレベルで併せ持つ研究者であり、本研究課題の推進に最適な研究者である。平成28年度以降も強力に本研究課題の実現と展開に向け努めてくれることを大いに期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28, 29年度では、まず1,2-diastereo-inductionを利用した多官能基化鎖状分子の立体選択的合成の実現を目指す。複雑なアルカロイドの合成においてα-アミノ炭素ラジカル種の有用性は認識されてきたが、付加反応のジアステレオ選択性を鎖状で制御した例は稀である。求核性を有するα-アミノ炭素ラジカル種はα-炭素上置換基との立体反発を最小にするように(1st-1,2-diastereo-induction)エノンに付加すると予想される。その結果、生じたケトンα位のラジカルは、Et3Bと反応しエノラートを生じる。このエノラートの求電子剤(例えば、アルデヒドやケトン)による捕捉も、エノンβ位置換基との立体反発を最小にするように(2nd-1,2-diastereo-induction)進行する。様々なα-アミノ炭素ラジカルと多置換エノンおよび求電子剤を用いて、その反応性およびジアステレオ選択性を精査する。 続いて、不斉Lewis酸触媒を用いたC=CおよびC=N二重結合へのラジカル的不斉付加反応を実現する。現代の有機合成化学においても、ラジカル付加反応をエナンチオ選択的に進行させる事は極めて挑戦的な課題である。そこで我々はα-ヘテロ炭素ラジカルを求核剤、アクリロイルオキサゾリジノンまたはグリオキシリックオキシムを求電子剤として用い、二価金属Lewis酸触媒(例えばMgX2, CuX2, ZnX2)およびキラルなビスオキサゾリン(BOX)配位子存在下、炭素ラジカル種のエナンチオ選択的求核付加反応を検討する。まず、Lewis酸触媒とBOX配位子の最適化を行い、様々なα-ヘテロ炭素ラジカルと求電子剤を用いて、その反応性およびエナンチオ選択性を精査する。また3成分ラジカル-極性交差型反応へも本法を拡張し、ラジカル的不斉付加反応と引き続くジアステレオ選択的アルドール反応の実現を目指す。さらに、以上の反応を応用し、効率的な天然物合成への展開も推進する。
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Research Products
(2 results)