2015 Fiscal Year Annual Research Report
極低温におけるシリコンフォノニック結晶中の熱伝導に関する研究
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15F15728
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野村 政宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (10466857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RAMIERE AYMERIC 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | phononic crystal / phonon engineering / phononics / phonon |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現在の技術での到達限界である100 mK程度の極低温環境において、シリコンフォノニック結晶ナノ構造を用いたフォノンの波動性に基づく熱伝導を実現し、その物理を体系的に明らかにすることを目的とする。 フォノンの波動性に基づいた熱伝導の制御はアイデアとして長く存在していたが、有限温度によるインコヒーレント散乱によってフォノンの位相は容易に破壊され、実現が困難であった。そこで、本研究では希釈冷凍機を用いてフォノンの位相の保持に理想的な100 mK程度の極低温における熱伝導測定系を構築し、周期100 nm程度の周期微細構造におけるフォノンの干渉効果による熱伝導制御を目指して研究を進めている。 本年度は、主に既存の希釈冷凍機を本研究用にカスタマイズすることに注力した。ルテニウム温度センサー、測定用電気配線、RFノイズフィルターなどを作製し、自動測定プログラムの構築、50 mKへの冷却試運転を終えた。また、試料加熱用ヒーターと温度センサーになる半導体-絶縁体-金属-絶縁体-半導体ジョセフソン接合の作製を開始した。 それと並行し、バリスティックフォノン伝導環境におけるフォノン輸送エンジニアリングをシミュレートするプログラムを構築した。これにより、拡散熱伝導領域では実現しないフォノンフォーカシングなどの指向性をもった熱輸送が、電子線描画装置を用いて作製できる寸法で実現可能なことを見出した。来年度は、本年度の研究を進める過程で新たに見出した物理も、予定していた計画に加えて遂行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
希釈冷凍機の立ち上げ作業は順調に進んでおり、試料の作製も開始しているが、今のところ問題は見つかっていない。したがって、実験系の立ち上げは予定通りである。 また、当初計画になかったシミュレーションの構築も加えて行っており、新しい物理を見出したことから、計画を上回る進展をみせていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
実験系においては、熱伝導の量子化を確認できるナノメカニカル振動子を作製し、SINISジョセフソン接合ヒーターおよび温度センサーが機能するかを確認する。次に弾性理論に基づいたシミュレーションにより、熱コンダクタンスの制御が明確になるフォノニック結晶ナノ構造を設計し、電子線描画装置およびドライエッチング装置などを用いて作製する。熱散逸過程が、フォノニック結晶ナノ構造の構造パラメータによってどのように変化するかを測定し、シミュレーション結果と比較する。また、シミュレーションによって得られている新奇物理の実証実験も行う。
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Research Products
(1 results)