2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15F15730
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 浩之 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50210555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CAPRON MARIE 名古屋大学, 生命農学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-10-09 – 2018-03-31
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Keywords | 二次細胞壁 / 内部応力 / 成長応力 / 二次木部 / あて材 / セルロースミクロフィブリル / 粘弾性 / 遅延解放 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木の二次木部表面における、成長応力解放ひずみ(以下解放ひずみ)と、湿熱回復ひずみ(湿熱処理によるロックイン応力の完全解放によって生じる寸法変化)との関連性を、裸子植物(針葉樹類、イチョウ類)およびいくつかの被子植物(いわゆる広葉樹類)について調査した。この調査によって、解放ひずみが木部細胞壁に発生・残留する内部応力の弾性成分であり、ロックイン応力が粘弾性成分であることの証明を試みた。以下結果を述べる。 (1)裸子植物については、ヒノキ、スギ、およびアガチス(以上針葉樹類)を調査対象とした。被子植物については、原始的被子植物であるホオノキ、真正双子葉類であるケヤキ、コナラについて測定を行った。いずれの供試個体も、傾斜して生育し、それゆえあて材組織が形成され、そこでは正常材とは明らかに異なる大きさの解放ひずみが計測された。その後の、室温での水中保蔵(1~2か月間)によっては、遅延解放は見られなかったが、温水(80℃以上)中での湿熱処理によって、寸法が大きく変化し、その大きさは解放ひずみに概ね比例的であった(針葉樹材の調査においては、所属研究室の松尾美幸助教および卒論学生の協力を得た)。 とくに、被子植物真正双子葉類のあて材(引張あて材)で、処理時間および処理温度の影響を検討したところ、湿熱回復は、粘弾性的にロックインされていた応力が、高温による緩和時間の急減によって引き起こされるということが強く示唆された(要は、粘弾性現象である)。 (2)湿熱処理前後での試験体細胞壁の形態情報(セルロースミクロフィブリルの直径、配向性など)の変化を、走査型ブローブ顕微鏡を用いて観察するための、試験体の観察条件を模索した(現在継続中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予期していなかった小さな変更はあるものの、大まかに言って予定通りに進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)当初、単子葉類およびヒマワリなどの大型草本被子植物についても、調査予定であったが、当初の予想を上回り、多量の樹木試料が入手できたため、樹木試料の解析を優先し、単子葉類および大型草本被子植物の調査は、平成28年度に行うこととした。 (2)湿熱・乾燥・再湿熱処理を施す前後で、木部繊維の長さ、外直径、内こう直径の変化を測定したが、予備調査の段階で特に大きな特徴が認められなかったので、これらマクロな形態情報については、今後特に追求しない方針を固めた。代わって、細胞壁成分(セルロースミクロフィブリルおよびマトリックス)レベルでの特徴を観察する(走査ブローブ顕微鏡観察)することに切り替えた。
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Research Products
(3 results)