2015 Fiscal Year Annual Research Report
キリシタン文献類に基づく能楽及び近世初期日本芸能史の研究
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15F15739
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
豊島 正之 上智大学, 文学部, 教授 (10180192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SCHWEMMER PATRICK 上智大学, 文学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-07-29 – 2017-03-31
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Keywords | キリシタン文献 / イエズス会 / 能楽 / Early Christian / Jesuit / Noh plays / カルタス / Cartas |
Outline of Annual Research Achievements |
日本発イエズス会報告類を、日本芸能史(特に能楽史)の史料として読み解く研究は従来からあるが、それらがイエズス会文書原典に基づいて行なわれた事はない。イエズス会報告類には、読み物として当時のヨーロッパで編纂・翻訳(例:ポルトガル語→イタリア語→ラテン語、スペイン語→ラテン語)・刊行された16~18世紀の版本類(cartasと通称される)と、その原典である書簡類とがあり、従来の研究は、専ら版本類(を更に邦訳したもの)に拠っていた。 本研究では、イエズス会本部文書館(ローマ)、スペイン王立歴史アカデミー(マドリード)等に分蔵されている原典類を、写真に基づいて概観した後、不鮮明な部分は直接原本に基づいて調査し、又、版本類の原本、その邦訳との本文の対照を行なって、版本類が行なった翻訳・編集の過程に就ても整理を行なった。特に、スペイン王立歴史アカデミー・スペイン国立文書館からは、格別の配慮によって、所蔵イエズス会日本関係報告類全点の画像の提供を受けて、著しく研究が進捗した。 従来のイエズス会報告類に基づく日本芸能史研究は、上記のように、版本類(の更に邦訳)に基づいているものであったため、原典からの重訳(ポルトガル語→ラテン語→日本語、など)によって原典の語義が大幅に置き換えられてしまったケースなども散見される。現在、こうした原典との食い違いなどについて、特に重要なキーワード(例:figura:役者・役名・人形と多義)の語義に対する、当時のラテン語・ポルトガル語対訳辞書などに基づいた再検討を進めている。 又、イエズス会報告類の原典は、必ずしも全容が把握されていない事が判明したため、それらの書誌目録についても、電子可読な形での編纂を精力的に進めており、それらと原本写真(電子画像)とを対照させた電子カタログを作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1. 調査すべきイエズス会報告原文類は、かなりの量を調査する事が出来た。 2. その原文写真(電子化データ)は、特にスペイン王立歴史アカデミー、スペイン国立文書館所蔵分に就ては、両館よりの格別の配慮によって、殆ど全ての画像の入手が終わり、現在、その整理に努めている。 3.それと対照すべき16~18世紀の版本イエズス会報告類についても、その殆どの画像が入手できており、文書の原典写真と版本の丁数との対照表も、主要部分については、編成が進んでいる。 4.対照すべき当時のラテン語・ポルトガル語対訳辞書との対照研究は、大きく進展している。 5.これらの研究成果に基づいた学術論文・研究発表(国際研究集会での発表を含む)を複数行なって、研究成果の公開に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. イエズス会報告原文類のうち、マドリード以外のスペイン、及び英国に所蔵されるものについては未調査であるので、それらを集中的に調査を進めたい。又、それらの原文写真(電子化データ)の入手にも努める。 2. イエズス会報告類の原文と16~18世紀の版本とを対照させた書誌目録の編纂を進め、原文と版本とが容易に対照・一覧できるようなデータ構築を引き続き進める。 3.従来は、版本報告類に基づいていた研究を、原典とその(当時の欧州での)版本化に伴う変容に遡って再構築し、対照すべき当時のラテン語・ポルトガル語対訳辞書との対照に基づいて、原典の原語義に遡った解釈を与える作業を進行させる。 4.これらの研究成果に基づいた学術論文・研究発表(国際研究集会での発表を含む)を複数行ない、研究成果の公開に努める。又、原典所蔵者の了解が得られる範囲で、本研究で編纂した書誌目録を、電子的に公開する。
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Research Products
(8 results)