2016 Fiscal Year Annual Research Report
有機リン蛍光色素の創製とバイオイメージングへの応用
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15F15761
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 茂弘 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 教授 (60260618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GRZYBOWSKI MAREK 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-10-09 – 2018-03-31
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Keywords | 有機リン蛍光色素 / 赤色発光 / 近赤外発光 / 蛍光イメージング / フルオレセイン誘導体 / ローダミン誘導体 / 高耐光性 / pH依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ローダミン色素の10位の酸素原子をホスホリル基(P(R)=O)に置換したホスファローダミン(PRs)を種々合成し,それぞれの光物性,光安定性,および反応性について検討した。PR色素は水中で700nmおよび740nm付近にそれぞれ吸収および蛍光極大波長を有していた。まず,ローダミン骨格に導入した9位のアリール基の置換基効果について検討した。2位にメチル基を導入したもの(PR1)は,水酸基やチオレートなどの求核剤が存在した場合,近赤外域の吸収および蛍光帯の著しい減少が認められた。そこで次に,2および6位にメチル基を導入したPR2を合成し,その物性を評価した。その結果,PR2はPR1に比べて化学的安定性は格段に向上したが,キセノン光照射により,いずれの色素も光褪色した。一方,2, 6位にメトキシ基を導入したPR3は,化学的安定性に加え,光安定性も格段に向上することがわかった。そこでPR3を化学修飾できるように変換したPREX710を新たに合成し,細胞イメージング実験に着手した。IgG抗体をPREX710でラベル化し,これを用いて微小管の抗体染色を行った。共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察したところ,非特異的な吸着はほとんど認められず,微小管のみが選択的に染色された。PREX710と同程度の光物性を有するCy5.5と共焦点顕微鏡下における光安定性について比較した。Cy5.5では光照射後数分以内にほぼシグナルが検出されなくなったのに対し,PREX710は10分間照射しても80%以上のシグナル強度が保持されていた。最後にPREX710の光安定性を一分子レベルで検証した。ガラス基板に色素を固定し,640 nmのレーザー光を照射した場合の一分子蛍光を観測したところ,褪色したのは約20%程度に留まった。一方,市販品であるAlexa647では10秒以内に蛍光シグナルは全く観測されなくなった。以上の結果から,PREX710は近赤外蛍光ラベル化剤として非常に優れた機能を有していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リン原子を骨格に含むキサンテン骨格は蛍光イメージングにおいて優れた光物性を示すことを明らかにしてきた。例えば,ホスファローダミンPRはリンオキシドの電子的な効果により,分子サイズを保持したまま近赤外域に吸収および蛍光極大をもつことを明らかにした。また,HOMO準位が低いことに起因して耐光性も高く,長時間のイメージングにも耐えうる。さらに特筆すべき点は,一分子蛍光イメージングにおいても2分以上光り続けており,既存の蛍光色素に比べ100倍以上のフォトンバジェットを得たことである。これらの成果はPR色素の幅広い応用の可能性を示すものである。これに加えて本研究を遂行するなかで,PR色素の加水分解によるホスファロドール(PRO)への変換反応を発見した。本変換反応の一般性を示すとともに,吸収および蛍光特性の溶媒依存性を明らかにした。以上の研究成果に関する論文は現在執筆中である。ホスファキサンテン色素の骨格開発のみならず新たな機能や特性を見出したことから,本研究課題は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ホスファローダミン骨格を新たな蛍光イメージング用蛍光色素として昇華すべく,その近赤外特性および超耐光性を利用して,①一分子追跡によるターゲットタンパク質の細胞内動態解析,②二光子蛍光イメージングによる深部in vivoイメージング,③細胞内グルタチオン濃度変化の定量的解析を進める。また,キサンテン骨格を修飾あるいはπ拡張することによって,様々な光物性をもつ一連の色素群を開発する。PREX710に比べより長波長側に吸収・蛍光極大を有するPR色素を合成することにより,④一分子FRET解析を可能にする組み合わせを探る。また,ホスファロドール色素については,環境応答性という特異な光物性を利用し,⑤SNAP-tagやHalo-tagなどと結合した場合のみに長波長側の発光が観測される「波長シフト型」の蛍光プローブを開発する。これを用いて,生細胞のwash-free labelingの実現を目指す。
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Research Products
(4 results)