2015 Fiscal Year Annual Research Report
テーラーメイド栄養を目指した新規機能性食品の開発とその作用機序の総合的解析
Project/Area Number |
15F15905
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 久典 東京大学, 総括プロジェクト機構, 教授 (40211164)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JIA HUIJUAN 東京大学, 総括プロジェクト機構, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 卵殻膜 / 炎症性腸疾患 / 多層オミクス解析 / Caco-2細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
【卵殻膜粉末摂取による炎症性腸疾患抑制効果の作用機構の多層オミクス解析】 デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導潰瘍性大腸炎モデルマウスを用い、卵殻膜粉末を8%含む飼料を7日間与えた後、1.5% DSSを9日間自由飲水させ大腸炎を誘発させた。卵殻膜粉末摂取により、大腸炎の重症度の指標であるdisease activity indexの上昇が抑制され、大腸炎の症状として観察される大腸長の短縮が軽減された。また卵殻膜粉末摂取により血中炎症マーカーのIL-6濃度は減少し、大腸の好中球の浸潤指標となるmyeloperoxidase活性値の上昇も抑制される傾向にあり、DSS誘導大腸炎モデルマウスの疾患症状を抑制することが示された。炎症性腸疾患の病態形成への関与が知られるTh17の細胞数を測定した結果、卵殻膜粉末摂取はTh17細胞数の増加を抑制することが明らかになった。トランスクリプトーム解析の結果、大腸においては各種免疫細胞の遊走を誘導するケモカインの発現が卵殻膜粉末摂取により抑制されていること、また肝臓においてはリポ多糖(LPS)に応答する遺伝子であるLbp(LPS binding protein)、Cd14(CD14 antigen)の発現が減少していることが明らかとなった。プロテオーム解析の結果、エネルギー代謝に関わるパスウェイに変動が認められ、卵殻膜粉末摂取によりミトコンドリアの電子伝達系および酸化的リン酸化に関わるタンパク質発現が増加し、また解糖系およびTCA回路が亢進していることが示唆された。メタボローム解析の結果からは、血中におけるTCA回路中間体や数種のアミノ酸が卵殻膜粉末摂取により増加していること、また肝臓においてTCA回路中間体の減少傾向が示された。さらに、ヒト結腸癌由来Caco-2細胞を用い、卵殻膜粉末の添加が腸上皮細胞の細胞増殖を促進することが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の通り、多層的オミクス解析を行い、卵殻膜粉末摂取による炎症性腸疾患抑制効果の作用機構を推定できた。またメタゲノム解析、遺伝子多型解析についても進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
【遺伝子多型によるテーラーメイド栄養・疾患予防】 大規模ヒト遺伝子多型解析データを利用し、食品成分と遺伝的な個人差に関して解析を進めていく。その一例として世界中で最も普及している嗜好品の一つであるコーヒーの摂取量と脂肪蓄積に関する遺伝多型解析を行う。これにより機能性食品素材よる個々ヒトの生理応答の違いや易罹患性との関連を同定し、個々ヒトの将来の健康予測をするテーラーメイド栄養予測システムの基盤を構築する。
|
Research Products
(6 results)