2007 Fiscal Year Annual Research Report
時空間における分子振動計測の極限化:分子から細胞まで物質組織化機構の解明に向けて
Project/Area Number |
15GS0204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱口 宏夫 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (00092297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩澤 康裕 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40018015)
岩田 耕一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (90232678)
加納 英明 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (70334240)
田原 太平 東京大学, 理化学研究所分子分光研究室, 主任研究員 (60217164)
高塚 和夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70154797)
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Keywords | 時間分解分光 / 空間分解分光 / 時空間分解分光 / ラマン分光 / 非線形ラマン分光 / 顕微分光 / ハイパーラマン散乱 / 分子近接場効果 |
Research Abstract |
平成19年度の研究の過程で、β-カロテンなど対称心を持つ共役色素の電子遷移が、近接する溶媒分子のハイパーラマン散乱強度を顕著に増大させるという新しい現象(分子近接場効果)を発見した。分子近接場効果を用いると、プローブ分子の近傍のみを選択的に計測する新しいナノメートル局所振動分光法が誕生する可能性がある。この可能性をさらに探求するために、研究計画を当初計画(平成19年度終了)より1年間(平成20年度まで)延長することを申請し、承認された。延長後の1年間に、ハイパーラマン散乱測定装置の高速化および励起波長の可変化に取り組み、β-カロテンの共鳴ハイパーラマン散乱の励起プロファイルを観測して、先に提出していた分子近接場効果の理論を裏付ける結果を得た。また、分子近接場効果を示す溶媒のスペクトルが、バルクのものと顕著に異なることを見出した。さらに、より簡単な色素であるヨウ素も分子近接場効果を示すことを見出し、この効果が一般性を持つことを確かめた。このように、1年間の研究期間延長により、分子近接場効果の機構に対する理解が深まり、ナノメートル、フェムト秒の時空間分解振動分光の実現に向けて一歩前進することができた。平成19および20年度を通じて、ピコ秒時間分解ラマン分光による光励起されたtrans-スチルベン分子の振動冷却過程の研究をさらに進展させた。6種のイオン液体中での冷却曲線を得て、これを熱拡散方程式により解析し、イオン液体中の局所構造のサイズに関する情報を得た。顕微CARS分光システムの開発をさらに推進し、近赤外のサブピコ秒レーザーを用いた装置を新たに開発し、従来測定が困難であった生細胞の指紋領域での分光イメージングを可能にした。近赤外共焦点顕微ラマン分光装置を製作し、植物細胞など蛍光の妨害により顕微ラマン分光測定が不可能な生体試料の振動スペクトル測定を可能にした。
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Research Products
(31 results)