2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15GS0216
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 正廣 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60167707)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉浦 健一 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60252714)
宮坂 等 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50332937)
岡本 博 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (40201991)
米満 賢治 自然科学研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (60270823)
岩崎 賢太郎 千葉大学, 工学部, 助手 (00251182)
|
Keywords | 非線形光学効果 / モット絶縁体 / 強相関電子系 / STM / バンド絶縁体 / パイエルス絶縁体 |
Research Abstract |
20世紀の「エレクトロニクスの時代」から、今21世紀は「フォトニクス(光)の時代」と呼ばれている。この「光の時代」の中枢を担うのが非線形光学効果である。これまでに研究から、量子閉じ込め効果により「ナノワイヤー(量子細線)」が最も適していることが明らかにされた。ナノワイヤーには、ポリシランに代表されるバンド絶縁体、ポリアセチレンに代表されるパイエルス絶縁体、我々が合成したNi(III)錯体のモット絶縁体がある。これまで、バンド絶縁体やパイエルス絶縁体に関する非線形光学効果の研究は多かったが、モット絶縁体に関する研究は皆無であった。その点に注目して我々は強相関電子系モット絶縁体[Ni(chxn)_2Br]Br_2(chxn=cyclohexanediamine)の三次非線形光学効果を電場変調法により測定した。その結果、従来のバンド絶縁体やパイエルス絶縁体の1万倍以上の世界最高の値を持つことを見いだした。今年は、この値よりもさらに大きな値を持つようにするために、2種類の化合物を新たに合成した。大きな値を持つためにはNi-Ni間距離を小さくする必要がある。そのためにchxn配位子よりもシンプルなプロピレンジアミン(pn)、とブタンジアミン(bn)を持つ化合物、[Ni(bn)_2Br]Br_2および[Ni(pn)_2Br]Br_2の単結晶を得ることに成功した。これらは、シクロヘキサンジアミン錯体よりも金属間距離が明らかに短くなっていた。[Ni(bn)_2Br]Br_2の単結晶の吸収スペクトルを測定したところシクロヘキサンジアミンにくらべて吸収強度が20%も増加していた。そのためにさらに大きな三次非線形光学効果が期待されるので、現在、三次非線形光学効果の測定に耐えるような大きな単結晶の作成を行っている。今回、得られた2種類の単結晶のSTM(走査型トンネル顕微鏡)像を測定することに成功した。ブタンジアミン錯体では明るいスプットが5Å間隔で観測され、単結晶X線解析の結果と一致した。一方、プロピレンジアミン錯体ではメチル基は右と左の交互に乱れているのではなくて、ドメイン構造を作りながらフラクタル的な乱れ方をし、全体で右が50%で左が50%の乱れであった。このように乱れを直接、実空間で観測したのは初めての例である。
|
Research Products
(7 results)