2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15GS0216
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 正廣 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (60167707)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉浦 健一 首都大学東京, 都市教養学部, 教授 (60252714)
岡本 博 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40201991)
米満 賢治 自然科学研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (60270823)
|
Keywords | 電荷密度波状態 / モット絶縁体状態 / 相転移 / 光誘起相転移 / 化学的圧力 / ナノワイヤー金属錯体 / 混合原子価錯体 / 平均原子価錯体 |
Research Abstract |
従来、ハロゲン架橋白金系錯体は、白金やパラジュウム錯体では電子格子相互作用が強い為に電荷密度波状態(混合原子価状態)を取るのに対して、ニッケル錯体では強相関電子系のためにモット・ハバード絶縁体(平均原子価状態)をとり、例外はなかった。 我々はパラジュウム錯体でモット・ハバード状態を作ることを目的に、カウンターイオンにいろいろな長さの長鎖アルキル基をもつスルフォン酸イオンを用いて錯体を合成した。アルキル基の長さが5の化合物の単結晶を得ることに成功し、室温と低温で構造解析を行つた。その結果、室温付近では混合原子価状態を取っているが150K付近ではモット・ハバード状態(平均原子価)を取っていることが明らかとなった。そこで温度を連続的に変えて、格子定数を求めたところ、200K付近で相転移があることが明らかとなった。高温で混合原子価状態で、低温で平均原子価状態へ相転移するような現象は、通常の一次元系の相転移とは逆である、この原因は長鎖アルキル基の端の炭素原子の温度因子が低温になるにつれて小さくなり、その結果、長鎖アルキル鎖間にファスナー効果.(化学的圧力効果)が効いて、パラジュウム間の距離が短くなってこのような珍しい逆相転移が起きたわけである。スピン磁化率においての200K付近に明確な反磁性から常磁性への転移が観測されたし、比熱の測定においても明確なピークが観測され、相転移が起きていることが確認された。アルキル鎖を9本や12本にすると室温においてすでにモット・ハバード状態である。これらは長鎖アルキル基間のファスナー効果で上手く説明できる。規定状態でモット・ハバード状態は世界で初めての例である。 モット・絶縁体状態のパラジュウム錯体を光強励起すると金属状態に転移した。これも初めての現象であり、光スイッチングや光通信への可能性が期待される。
|
Research Products
(7 results)