Outline of Annual Research Achievements |
1. 研究の目的 本研究は, 鑑賞学習を実施し, 学級や学年, 人数構成, 鑑賞の場所, 鑑賞方法, 教材の工夫, 介入のあり方など, 対象や場を様々に変化させた実践, 授業支援など, 活動や場に対応した学習環境と活動をデザインすることである。学習環境や活動形式をデザインし, 実践した学習過程を子供の学びの観点より相互行為分析を行うことで, 授業そのものを捉え返す。 2. 研究方法 ① 今までに行った分析方法をさらに詳細に記述考察することで, 鑑賞活動の学習過程に対応した分析方法を検討する。 ② 美術館で対話による鑑賞活動を行い、今までの実践を踏まえ分析。可動式ビデオカメラ5台と固定式ビデオカメラ2台での記録, ICレコーダを各児童の腕に付けて録音し, 事例収集し, 画像を用いたトランスクリプトにより学習活動の過程を分析記述した。 3. おわりに 本実践では, 対話による鑑賞の学習活動を経験してきた子供たちを対象とし, 対話による鑑賞活動の経験が子供たちの鑑賞者としての資質能力の育ちを形成していることが, 研究を通して明らかになった。本研究は, 美術館において本物の作品を前にした鑑賞活動で起きる対話により, 個々人の経験・語り・知覚が他者のそれらと連鎖して相互作用し, 相互につくりかえられていく「生きて働く世界」を分析記述した。 本物の美術作品は, 子供の前で「現実世界」として存在し, 印刷物やレプリカのような「表象世界」とは異なり, 鑑賞者の経験・語り・知覚を直接的に触発し, 互いの経験・語り・知覚を繋いで, 互いの中に協働の世界をつくりだしたり, 受動的な経験を生み出したりしながらテクスト化する。美術館で作品を鑑賞することは, 生きて働く世界を経験することであり, 「現実世界」(美術作品)から触発される自己の経験・語り・知覚を他者のそれらと繋いで, 受動的に生み出すことである。個々人の経験・語り・知覚を触発し, 多様な行為や作品の見方を生み出すことで, 自分と他者の互いの経験・語り・知覚をつくりつくりかえていくことが明らかになった。
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