2015 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルにおけるコントラフリーローディングに基づく採食エンリッチメントの検討
Project/Area Number |
15H00449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 直子 京都大学, 霊長類研究所, 技術職員
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 動物福祉 / 環境エンリッチメント / 採食行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】動物の行動学的要求にもとづき, 動物による主体的な選択が可能な環境を創る環境エンリッチメントは, 動物福祉を向上させる重要な取り組みである。飼育下では採食時間の延長を目的としたフィーダー(給餌装置)がしばしば用いられるが, そのフィーダーの利用が動物の主体的選択によるものかどうかという議論はあまりない。一方で, 飼育下の動物においてContrafreeloading (以下, CFL : 簡単に手に入る餌があるにもかかわらず手間をかけて手に入る餌の方をより主体的に選択する現象)がみられることが知られているが, 先行研究ではおもに単独飼育個体を対象としていた。本研究では, 群れ飼育されているニホンザル(Macaca fuscata fuscata)の社会的場面でもCFLが起こりうるかどうか検証することを目的とした。また, 群内の攻撃的交渉などの社会行動パラメータを用い, 採食環境エンリッチメントとしてのフィーダー導入の客観的評価もおこなった。 【研究方法】屋外放飼場で群飼育されているニホンザル2群(T群 : 47個体, W群37個体)を対象とした。給餌操作のための区画を2か所ずつ設け, 対照条件(両区画で単純散布)および実験条件(単純散布/フィーダー給餌)を設定し, それぞれ同質・同量の餌(サル用固形飼料)をセットした。1分ごとのスキャンサンプリング法を用いて60分間の各区画の利用個体数を記録し, さらにフォーカル個体の利用場所と行動, ならびに各区画での社会的攻撃交渉(威嚇・追回し・闘争など)の生起頻度を記録した。 【研究成果】動物の最適採餌戦略ではより簡単に得られる単純散布の利用個体数が多くなると予想されるが, 一方で今回の実験の結果, 両群ともにフィーダー給餌の区画を利用した個体数が比較的多く, CFLが起こりうることを示す結果となった。今回は, 採食場面での攻撃交渉の頻度は各条件において変化しなかったが, 動物の本質的な行動要求を理解し動物福祉の向上をはかるための知見が得られた。
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Research Products
(2 results)