2015 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧種イソコモリグモの保全策に向けた集団構造の解明
Project/Area Number |
15H00453
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷川 明男 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 農学特定支援員
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 砂浜 / マイクロサテライト / 分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
イソコモリグモの集団遺伝構造を明らかにするため, 6つのマイクロサテライトマーカーによる解析を行った. 材料に使用したイソコモリグモは, 国内の生息範囲全体にわたる46ヵ所の砂浜海岸から採集した708個体であった. このうち, 10個体以上のデータを得ることのできた42海岸645個体のデータを用いて集団構造解析を行った. その結果, 遺伝子構成の違いによって, 対象海岸は, 大きく6つの系統グループに分けられた. また, どの遺伝子座ごとに見ても, すべての遺伝子座で見ても集団間の分化の程度は有意に大きかった. 42の海岸のうち, 隣接する2海岸の間に有意差のない組み合わせが3組, 4海岸の間に有意差のないグループが1つ, 3海岸の間に有意差のないグループが1つで, 残りの29の海岸では隣接する両側の海岸との間に有意差が見られた. イソコモリグモ集団全体が大きく6つの系統集団に分かれること, 各海岸に生息するイソコモリグモ集団の遺伝子構成が異なっていることは, ミトコンドリア遺伝子を用いた研究の結果と一致している. しかし, ミトコンドリアは母性遺伝なので, 雄の移動分散による海岸間の遺伝子流動の有無が不明のままであった. 本研究において行った核遺伝子による集団解析でも, ミトコンドリア遺伝子での解析結果と同じ結果が示されたことから, 雌雄の情報を合わせて考えても, 一部の海岸を除いて, 各海岸間での遺伝子流動は極めて小さい, すなわち, 海岸間の個体の移動分散はほとんど考えられないことが判明した. イソコモリグモの移動能力が小さいということは, 砂浜海岸が破壊され, 局所絶滅が起きてしまうと, たとえ砂浜の環境を復元しても, 他の生息地からの個体の移入による集団の自然復活は期待できないので, 現時点で生息の見られる砂浜海岸の環境を維持し保全することが, イソコモリグモの生息保全に関してきわめて重要であることがますます明確になった.
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