2015 Fiscal Year Annual Research Report
心臓構成細胞の薬剤感受性の差に着目したドキソルビシン誘発心毒性の定量的解析
Project/Area Number |
15H00496
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
折山 豊仁 東京大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | ドキソルビシン / 心毒性 / 心筋修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗悪性腫瘍剤であるドキソルビシン(DXR)は、重篤な副作用として心毒性を起こすことが知られている。縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫に対してはDXRを含む多剤併用化学療法であるCHOP療法が標準治療とされているが、近年ではDA-EPOCH療法も注目されている。両者間で最終的なDXR投与量は同程度であり、CHOP療法は数分~30分程度での投与である一方で、DA-EPOCH療法では96時間持続点滴となっている点が異なるのみであるが、心毒性の発現頻度はDA-EPOCH療法の方が少ないことが報告されており、注目を集めていた。 一方で、心筋細胞(CM)は再生能を有さず、CMが障害を受けた際には心筋線維芽細胞(CMF)が障害部を修復することが知られている。また、CMFの方がCMよりもDXRによる細胞傷害作用を受けにくい性質を有することも示唆されている。そこで研究代表者らは、DA-EPOCH療法では96時間持続点滴であるため、CHOP療法と比較して血清中DXRは全体に低く、CMは傷害を受けるがCMFは傷害を免れるため心筋修復が十分機能し心毒性が低減される、という仮説を設定し、in vitro、in vivoの両面から検証を試みた。 現在、in vitroにおける検証については、1~2日齢C57/BL系マウス心臓よりCMとCMFに分離採取し、薬物による細胞障害を測定できる段階に至っている。一方で、CHOP療法、DA-EPOCH療法の血清中濃度推移を模してDXRを曝露するプロトコル作成に難渋しており、濃度推移の差による細胞毒性の違いの評価は終了していない。また、in vivo実験については、種差の影響等を考慮しin vitro実験系での評価終了後に検証に適切な投与量を設定する予定としている。今後は、可及的速やかにin vitro実験系による評価を進め、in vivoにおける検証も開始する予定である。
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