2015 Fiscal Year Annual Research Report
栄養状態が麻薬性鎮痛薬貼付剤の鎮痛効果に及ぼす影響に関する前向き臨床研究
Project/Area Number |
15H00518
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
高橋 宏彰 岩手医科大学, 薬剤部, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | フェンタニル貼付剤 / 疼痛コントロール / 栄養状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん患者は終末期に複雑な代謝異常と極度の栄養状態の低下に起因するがん悪液質に陥ることが多い。麻薬性鎮痛薬のフェンタニル貼付剤(FP)を使用しているがん悪液質患者のフェンタニル血中濃度は、非悪液質患者に比べて有意に低いことが報告されているが、その原因は不明であり、FPによる疼痛管理において、がん悪液質がどのような影響を与えるのかも明らかにされていない。本研究では、がん悪液質が、FPによる疼痛コントロールに影響を及ぼすか否かを評価するとともに、がん悪液質患者におけるフェンタニル経皮吸収性の低下に関与するメカニズムを解明することを目的とする。 平成24年1月1日から平成25年12月31日までの期間に、FPを初めて使用したがん患者を対象とし、後ろ向きに調査を行った。がん悪液質の有無は、European Palliative Care Research Collaborativeの診断基準を用いて評価した。また、疼痛強度の評価にはNumeric Rating Scale を用いた。さらに、各患者のFPおよびレスキュー薬の投与量は、モルヒネ換算によるオピオイド総投与量として算出した。 がん悪液質群と非悪液質群の疼痛強度を比較した結果、両群間に有意な差は認められなかった。しかしながら、がん悪液質群のオピオイド総投与量および疼痛強度の変化量は、いずれも非悪液質群に比べて有意に高かった。さらに、FPからモルヒネ注射薬への切り替えが行われたがん悪液質患者における疼痛強度およびオピオイド総投与量は、切り替え前に比べて、いずれも有意に低かった。 これらの結果から、がん悪液質患者のFPによる疼痛コントロールは、非悪液質患者に比べて悪化する可能性が高いことが示唆された。現在、がん悪液質患者におけるフェンタニル経皮吸収性の低下に関与するメカニズムを解明すべく、前向き臨床研究にて症例集積中である。
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