2015 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレス応答因子「チオレドキシン」の薬剤性急性腎障害早期診断マーカーへの展開
Project/Area Number |
15H00535
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
田中 遼大 大分大学, 薬剤部, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | チオレドキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
急性腎障害(AKI)は慢性腎臓病や心血管疾患のリスクを増大させ、生命予後に重大な影響を与える。現在、AKIの診断には血清クレアチニン(SCr)が用いられているが、SCrは腎障害後に蓄積する因子であるため、急性期の傷害を鋭敏に診断することは困難である。そのため、早期診断のための有能なバイオマーカーの確立が切望されている。AKI発症の約30%は薬剤(シスプラチン、抗菌薬、鎮痛薬など)を原因とするが、近年、その発症機序に活性酸素種と抗酸化因子のバランスの破綻、いわゆる「酸化ストレス」による腎臓への傷害の関与が明らかとなった。この酸化ストレス時に発現が上昇する因子の一つに生体内抗酸化タンパク質であるチオレドキシン(Trx)がある。そこで本研究では、薬剤性AKIの早期診断マーカーとしてのTrxの有効性を評価する目的で、シスプラチン腎症を対象として、投与時のTrx発現量の推移に関する検討を行った。 マウスを用いてシスプラチンを腹腔内投与後、経時的に採血及び蓄尿を行い、既存の腎障害マーカーの変動を確認したところ、投与3~4日後において顕著な上昇が認められた。一方、尿中Trx発現量の経時推移を評価したところ、腎障害マーカーが変動しない投与1日後における上昇傾向が明らかとなり、その後は低下する傾向が示された。現在、上記の誘導傾向をもとに、シスプラチン使用患者における有用性評価を行うための準備段階であり、シスプラチン使用患者におけるAKIの重症度と早期のTrx発現量の関係性の解明及び各ステージのCut-off値の算出を行う予定である。
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