2015 Fiscal Year Annual Research Report
抗MRSA薬の適正使用に向けた薬剤性腎障害の発現機序の解明
Project/Area Number |
15H00562
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中村 安孝 大阪市立大学, 医学部附属病院 薬剤部, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 腎障害 / MRSA / ヒト近位尿細管細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】塩酸バンコマイシン(VCM)、テイコプラニン(TEIC)、アルベカシン(ABK)、リネゾリド(LZD)、ダプトマイシン(DAP)は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に優れた抗菌活性を示す。昨年度まで、ヒト近位尿細管細胞株(RPTEC)に対する抗MRSA薬の影響を検討してきた。今年度は細胞障害作用が認められた抗MRSA薬の薬剤性腎障害発生の機序を明らかにし、各薬剤を比較することで、腎障害時の抗MRSA薬の適正使用薬剤の選定基準の作成や腎障害発生時における代替薬剤選択の有効な情報として臨床現場に還元することを目的とした。 【結果・考察】申請者らはこれまでに、使用可能な抗MRSA薬(VCM、ABK、TEIC、LZD、DAP)を用いて、ヒト近位尿細管細胞株(RPTEC)に対する抗MRSA薬の影響を検討してきた(平成26年度奨励研究)。その結果、VCM、ABKだけではなく、TEIC、DAPも同様にRPTECに対して障害作用を確認した。一方、LZDはRPTECの生存に影響を示さなかった。これらより、腎障害時においてはLZDの使用が推奨されると考えられた。抗MRSA薬による細胞障害機序の解明を行い、ウエスタンブロット法やMTT法による結果から、VCM、ABK、TEICはネクローシス、DAPはアポトーシスであることが確認された。ただし、VCMはアポトーシスであるとの報告もあることから、今後さらに検討する必要がある。また、臨床応用については、各薬剤のインタビューフォームから確認される腎および尿路障害発現率は、VCM、ABK、TEIC、DAP、LZDはそれぞれ5.01%、3.31%、1.55%、0.37、データなしとなっており、必ずしもRPTECの結果と関連するものではなかった。加えて、実臨床において腎障害発生時において腎障害の少ないLZDへの変更症例を集積している段階であり、臨床結果と細胞障害の有無との関連性について検討していく予定である。
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