2015 Fiscal Year Annual Research Report
市中肺炎における血液培養検査が抗菌薬使用方法と入院期間に与える影響に関する調査
Project/Area Number |
15H00565
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
室 高広 国立大学法人長崎大学, 病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 市中肺炎 / 血液培養検査 / レセプトデータベース |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 海外では、市中肺炎に対する血液培養検査(以下、血培)は有用性に乏しく偽陽性の結果による抗菌薬の不適切使用や入院期間の延長につながるとして重症例以外の実施は推奨されていない。そこで本邦における市中肺炎救急入院患者に対する血培の実態を調査しその有用性を評価した。 【方法】 全国14の大学病院のレセプトデータベースを用いて平成26年1月1日から平成27年5月31日の間に救急入院した市中肺炎患者について、患者背景、抗菌薬投与前の血培の有無、抗菌薬使用状況と使用コスト、入院期間、ガイドラインで血培実施が推奨されている状況(ICU入室、白血球減少、アルコール依存症、肝疾患、無脾症、胸水貯留、尿中肺炎球菌抗原測定)の有無を調査した。入院中に肺炎以外の感染症を発症した患者と手術実施患者は除外した。各調査項目について血培の有無で比較した。両群の差の検定にはBrunner-Munzel検定を用いた。また、入院期間に対する各要因の影響について重回帰分析を行い、説明因子の選択はBIC (Bayesian Information Criterion)を用いたステップワイズ法で行った。P<0.05を有意とした。 【結果】 解析対象患者188名の内、ガイドラインで血培実施が推奨されていない患者の62.2%に血培が実施されていた。血培実施の有無で入院期間やICU入室期間に差はなかった。抗菌薬の変更回数が血培非実施群に比べ実施群で有意に高かった(P=0.01)が、抗菌薬の種類、投与期間、抗菌薬使用コストは両群で差が認められなかった。また、調査項目の中に入院期間に影響を与える因子はなかった。 【考察】 本邦における市中肺炎救急入院患者に対する血培実施状況が明らかとなった。また、血培実施は入院期間に影響を与えないため、市中肺炎患者に対する血培の必要性を検討する必要があることが示唆された。今後前向き研究による詳細調査で再確認することが望まれる。
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