2015 Fiscal Year Annual Research Report
複数の抗菌薬使用量評価指標を用いた薬剤耐性菌発生リスク予測モデルの構築
Project/Area Number |
15H00567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 諒 東京大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 抗菌薬 / 耐性菌 / AUD |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の背景・目的】 抗菌薬使用量のサーベイランスにはAUD (Antimicrobial Use Density)やDOT(Days of Therapy)といった指標が汎用されているが、様々な問題点も指摘されている。本研究の目的は、これらの指標を組み合わせることで、不適切な抗菌薬使用を効率的に検出し、是正することを可能とする新たな客観的指標を提案し、病原菌の耐性化率との定量的関係について検証することである。 【研究方法】 1. 東京大学医学部附属病院(以下当院)の抗菌薬処方システムを利用し、抗緑膿菌活性を有する薬剤の総使用量の抽出を行いAUDを算出した。また、患者毎の各薬剤の投与日数を医事科データや電子カルテから抽出しDOTを算出した。 2. 本研究ではDOTやAUDでは反映しきれない1日当たりの実際の抗菌薬投与量(ADD : Actual Daily Dose)、および平均抗菌薬投与日数(mDOT : mean Days of Therapy)を新規指標として導入した。1で抽出したデータを用いて診療科別にADD及びmDOTを算出した。 3.2005年度から2012年度まで当院の血液培養から検出された緑膿菌の感受性を算出した。 4. 上記指標を使用して各抗菌薬の使用状況と耐性菌との関係を調査した。 【研究成果】 当院ではピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)のAUD及びDOTが年々増加傾向にあった。しかし、PIPC/TAZの緑膿菌の感受性は近年回復傾向にあったことから、AUDやDOTだけでは薬剤耐性菌発生リスクの客観的使用としては不十分であることが示唆された。一方、本研究で新規指標として導入したADD及びmDOTの推移は横ばいであることから、低用量・長期投与といった不適切な使用ではないと判断できた。これらの結果から、mDOT, ADDを含めた複合的な指標を用いることで、AUDやDOT単独では説明できなかった薬剤耐性化のリスクをより精度よく説明できる可能性が示された。
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