2015 Fiscal Year Annual Research Report
放射線誘発口腔粘膜炎に対するバルプロ酸ナトリウムの有用性および安全性に関する研究
Project/Area Number |
15H00570
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
渡邉 真一 愛媛大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 口内炎 / バルプロ酸ナトリウム / 放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】がん放射線治療により生じる口内炎は重篤で患者のQOLを大きく低下させるにも関わらず、現在のところ有効な治療薬剤はなく、臨床では局所麻酔や鎮痛・抗炎症薬による対症療法が行われているに過ぎないことから、口腔粘膜炎用薬の開発・開拓が望まれている。近年、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤が後天的な遺伝作用をもたらすことで、放射線によるDNAの損傷を防護することが報告された。これまでに我々は、放射線誘発口腔粘膜炎に対してバルプロ酸ナトリウムが改善作用をことを確認しており、本研究ではさらに詳細な作用機序および安全性について検討を行った。 【方法】6週齢の雄性シリアンハムスターのチークポーチに放射線単回照射(30Gy)を行うことで口内炎を発症させた。バルプロ酸ナトリウム(600mg/kg)は放射線照射30分後に腹腔内投与し、頬袋のサンプリングを照射後14日目に行った。作用機序はPCR法により各種遺伝子の発現を評価した。また、安全性の確認として、ヒト舌扁平上皮がん細胞を用いて細胞増殖能を評価した。 【結果・考察】バルプロ酸ナトリウム600mg/kgの投与により、β-cateninの発現上昇およびTGF-βの発現抑制が認められた。一方でNF-κbの発現には影響を与えなかった。上記のことから、バルプロ酸ナトリウムによる口腔粘膜炎改善作用はWnt/β-cateninシグナリングの亢進による粘膜修復作用やTGF-βの発現抑制による細胞死の抑制が関与することが示唆された。また、ヒト舌扁平上皮がん細胞に対してはlmM以上の濃度で放射線増感作用を示すことが明らかとなった。本研究によりバルプロ酸ナトリウムは口腔がん細胞に対して悪影響を与えることなく口内炎予防・軽減作用を示すことが明らかとなった。このことによりバルプロ酸ナトリウムは放射線誘発口内炎の予防薬として、有用かつ安全である可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)