2015 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞移植における腎障害の重篤化回避に向けた評価法の確立と危険因子の解明
Project/Area Number |
15H00573
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
末次 王卓 九州大学, 大学病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 造血幹細胞移植 / 腎障害 / タクロリムス |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】造血幹細胞移植治療では様々な薬剤を使用するが、移植後の移植片対宿主病の予防に必須の免疫抑制薬は、血中濃度の上昇により腎毒性を示すことから、厳密な血中濃度管理による腎障害の重篤化回避が必要不可欠である。特に、免疫抑制薬を静注から経口に切替える際に、意図せず血中濃度が変動する場合があるが、その要因について十分な検討はされていない。そこで本研究では、造血幹細胞移植後の腎障害の重篤化回避の対策を構築するために、免疫抑制薬の投与経路の変更による血中濃度の変動に影響を及ぼす要因ならびに血中濃度の変動と腎障害との関連性について検討を行った。 【方法】2010年12月~2013年12月に九州大学病院において造血幹細胞移植を受け、タクロリムスを投与した患者73名を対象とした。タクロリムスを静注から経口に切替える前および切替え後3~5日目について、血中トラフ濃度/投与量(C/D)比をそれぞれ算出し、C/D比の比率変動に影響を及ぼす因子について多変量解析を行った。さらに、タクロリムスのC/D比の比率が高い群(上位25%)とその他の群(下位75%)に分け、切替え後2週間までの血清クレアチニン値を比較した。なお、タクロリムスの血中濃度測定は、静注から経口への切替え後週3回程度実施した。 【成果】タクロリムスのC/D比の比率は、アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾールもしくはボリコナゾールを併用している患者で有意に高く、これらを併用している患者では、経口への切替え後にタクロリムスの血中濃度が上昇しやすいことが明らかになった。一方、タクロリムスのC/D比の比率が高い群とその他の群における血清クレアチニン値に有意な差はみられなかった。本研究の結果から、造血幹細胞移植後におけるタクロリムスの投与経路変更による血中濃度の上昇は、アゾール系抗真菌薬の併用が大きく影響するが、腎障害は血中濃度を厳密に管理することで重篤化回避が可能であることが示唆された。
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Research Products
(1 results)