2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H00697
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
美根 大介 東京大学, 医学部附属病院, 登録診療員
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 鍼灸 / 鍼刺激 / 指床間距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 : 高齢者にとって運動機能の低下は直接日常生活レベルの低下へとつながる恐れがあり、特に体幹の柔軟性を維持することは転倒や障害を防ぐ上では非常に重要と考えられる。鍼灸治療における鍼刺激は、四肢の経穴(ツボ)への簡単な刺激で身体の柔軟性を高める可能性があることが知られているが、刺激方法による効果の違いは明確にされていない。今回の研究では、通常行われる鍼刺激と皮膚及び皮下組織のみを刺激する円皮鍼(鍼長0.3mmの貼付型の鍼)を用いて、上肢・下肢の代表的な経穴への刺激が体幹柔軟性に与える影響を比較した。 研究方法 : 健常成人6名(平均年齢35.3歳)を対象に、①コントロール(無刺激)、②-a. 上肢の経穴「合谷」への通常の鍼刺激を10秒間、②-b. 下肢の経穴「足三里」への通常の鍼刺激を10秒間、③-a. 「合谷」へ円皮鍼を皮膚に貼付、③-b. 「足三里」へ円皮鍼を皮膚に貼付、の3パターンの方法を行い、刺激前後の体幹柔軟性の変化を立位体前屈での指床間距離(FFD)で評価した。各方法はそれぞれ別の日に行い、刺激前後にはストレッチ効果を除外するため1時間以上の間隔を空けた。 研究成果 : コントロールでは、FFDの変化は平均-2mmとほとんど変化しなかったのに対し、通常の鍼刺激と円皮鍼の貼付では、上肢「合谷」においても下肢「足三里」においても共にFFDが平均0.9~23mm変化し、体幹の柔軟性が高まる傾向が認められた。特に上肢「合谷」の通常の鍼刺激は平均23mmと統計学的に有意なFFDの変化が認められた。今回の結果から鍼刺激は一様に体幹の柔軟性を高める効果が期待出来ると推察され、皮膚及び皮下組織のみへの刺激より通常の鍼刺激がより効果的である可能性が示唆された。しかし、被験者に若年者が多いことと、変化の有無には個体差が大きいことが検討課題と思われた。
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