2015 Fiscal Year Annual Research Report
量子最適化計算の拡張定式化による新基軸確立とその古典・量子計算両面での問題解決
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15H01677
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (80183010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 茂 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (30362833)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 量子計算理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の研究では、研究代表者の今井は研究協力者とともに、離散構造解明の立場から多面体的組合せ論での拡張定式化の複雑度について、自らの既存成果を拡張して広いクラスで複雑度が問題サイズの多項式で押さえられる明解な結果を与えた。量子アニーリングの有効性を計算実験で解明することを開始しており、量子アニーリングの限界を示しつつある。多面体的組合せ論の観点からは、Isingモデルの最小エネルギー状態を求める問題と等価な最大カットの問題、またその分配関数・母関数についても、グラフ点マイナー理論を中心とした新たな展開である点マイナー理論のランク幅・ランク分解を適用して、厳密計算するアルゴリズムを与えている。研究分担者の山下は、量子質問計算量についての成果を連携研究者のLe Gallとともにあげ、本研究で軸とすえる量子回路設計については測定ベース量子計算の基礎となるクラスタ常態の回路の最適化などの成果を上げた。研究全体の基盤となる量子アルゴリズムの能力を極める方向で、連携研究者Le Gallと研究協力者中島は、グラフの3角形発見問題での成果をあげた。この問題は行列乗算の計算量と直結した問題であり、そこでグラフの疎構造を活用・反映した量子アルゴリズムが設計できることが示されており、非定型的構造をいかに量子アルゴリズム論として解決するかという観点から有用な知見を与えた。また直結する行列乗算について古典・量子両面からの成果を得た。また、連携研究者の村尾により、測定ベース量子計算モデルの基礎となる測定の制御に関する成果を上げるとともに、分散量子計算での新たな符号化法に関する成果も得ている。本研究の初年度で繰越をして翌年度にまたがった研究において、本研究課題立上げ当初より目指していた量子計算を種々の面から解析してその有用性を広げ、限界を明らかにする研究をスタートすることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書段階で、量子計算を用いた最適化および量子計算そのものを最適化する方向性に基づき、種々の量子計算問題・モデルそして古典・量子計算両面からも多面的に研究を進める計画であったところ、研究代表者・分担者そして連携研究者の間での連携を行いながら、想定していた以上のペースで成果をあげつつある。 当初想定していた古典・量子両面からの解析については、行列乗算というコンピュータ科学の最も基本的問題の1つを軸として、古典の行列乗算への量子計算でのテンソル積解析の問題での成果や、グラフでの3角形発見問題の量子質問計算量の解析を通して規則的でない疎構造を量子アルゴリズムで利用することに取組んでおり、それを踏み台として量子質問計算量への展開もみえてきた。離散最適化と量子アニーリングの関係の解明については、基礎部分での成果を得たところで、それを今後結び付けていくことが期待できる。量子回路最適化、量子測定の情報処理面からの利用についても成果を得ている。 このように当初の計画以上の進展がみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにあげた成果をさらに発展させ、さらに量子最適化を量子計算そのものの最適化と量子アニーリング等のより広い面からの最適化問題解決を目指していく。その際に離散最適化の成果を基礎としてすえ、物理の観点からの量子測定や情報理論的解析と連携を図ることにより、さらに新たな成果が得られることが期待できる。
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Research Products
(36 results)