2015 Fiscal Year Annual Research Report
意識下応答を活用したシームレス機能拡張インタフェース:バーチャルサイボーグの研究
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15H01699
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 太郎 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (00260521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 正紘 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (40621652)
安藤 英由樹 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70447035)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人間機能拡張 / 自己主体感 / 自己所有感 / サイボーグ / バーチャルリアリティ / 仮現運動 / 自己身体像 / 随意操縦 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,複雑化する機械システムに対してより高い利便性と安全性を求めて車の自動操縦に代表されるように自律制御への要求が高まりつつある.この際に利用者の意図を反映する随意性を共存させることが大きな課題となっている.元来ヒト自身の持つ意識下システム自体,その機能は意識上に負担をかけることなく半自動的に信号処理や身体制御を行うという半自律システムである.そこで新たに同様の応答を行う半自動システムを工学的に追加し,人の意図に応じたAgencyをもって連動させることで,これを新たな身体の一部として認識させ,複雑な操作負担無しに随意に操れるようにする身体の機能拡張技術「バーチャルサイボーグ」の実現を狙う.平成27年度にはまず没入的なVR環境を構築し,この環境を用いて実時間的な感覚-運動過程において身体性を基盤とした随意性(Agency)と自己身体性(Ownership)についてその成立条件を検証した.本研究では自己身体の拡張のために自己身体像の変容の可否を確認するために腹部中央から突起状の「第3の腕」に相当する部位が生じるか否かを検証した.触覚刺激と視覚刺激の同期刺激と非同期刺激によってラバーハンドと同様のシーケンスにおいて変容を促進した結果,主観応答および皮膚抵抗変化によって自己所有感領域の変容を確認した. 次に自己主体感を伴う新たな運動部位として「第3の腕」をロボット技術を用いて製作した.「第3の腕」の制御技術には身体の意識下応答を用いた意図推定技術である「つもり制御」を用いて自己主体感を維持するための運動イメージと身体応答の対応関係を機械学習的に抽出した.次年度以降この「つもり制御系」における随意操作の正答率を随意性の指標として用いることで上記検証を定量的に進めていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況としては,自己所有感の生成/消滅を支配する条件の検証については捗捗しい進歩があったと考えている.特に従来のラバーハンド研究と異なり生来存在しない3本目の突起物を身体から生えた自己であると認識させることに成功した点は大きな成果であるといえる.さらに自己主体感を伴う新たな運動部位として「第3の腕」をロボット技術を用いて製作し,その制御技術には身体の意識下応答を用いた意図推定技術である「つもり制御」を用いて自己主体感を維持するための運動イメージと身体応答の対応関係を機械学習的に抽出した.次年度以降この「つもり制御系」における随意操作の正答率を随意性の指標として用いることで上記検証を定量的に進めていく予定である.バーチャルな空間内とはいえ3本目の腕の制御について自己主体感生成を期待できる最初の段階にまで目処がったことは成果として大きい.その一方で,物理的な実機の製作は機構部の簡略化によって進捗がはかどった部分と,感覚フィードバック系の実装が遅れている部分があり,これらの進捗の足並みが揃わないことには自己主体感と自己所有感の相互作用についての実験的検証が進めにくい点が現状の課題である. スケール変換テレイグジスタンスを介した一人称体験での物理定数変動に対する適応の検証については「自他融合感生成」と「速度変調」を同居させた視覚刺激の生成とそれを用いた行動誘導実験に成功した点が大きな成果である.ここで活用した4ストローク刺激は往復的な仮現運動生成条件下での輝度反転との組み合わせ刺激によって生じる錯覚現象であり「位置移動を伴わない速度印象」を生じさせることが出来る現象である.この現象によって誘導される行動の応答特性は自己主体感の成立条件と強く関わっているものと考えられるため,次年度以降の検証実験の誘導刺激として活用する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず感覚フィードバック部分の新規設計と実装に取り組み,能動運動が可能な「3本目の腕」ロボットシステムとその触覚情報を装着者にフィーバックする全体システムの再設計・改作と検証実験の準備を同年度内に整える計画である.また本年度には課題3次元空間位置姿勢へのリーチング動作に限定されていた動作分節の種別を増加させて運動の随意性を向上させることで,「つもり制御系」における随意操作の正答率を身体動作一般に対する随意性の指標として用いることを狙う.これによって自己主体感と自己所有感の相互関係の検証を定量的に進めていく. さらに本年度の成果から自己所有感覚の変化についてはその本質が「自他境界面の変容」にあり「自他境界面の内外での空間認識様式の違い」の側面が明らかになりつつあることから,次年度以降ではこの現象を知覚心理学的に実証する実験を進める予定である. また,4ストローク刺激を用いた速度錯覚による行動誘導技術は身体像変容,特に物理挙動の変容に対しての効果が大きく期待されている.スケール変換テレイグジスタンス環境や非人型身体構造へのテレイグジスタンスなどの条件変化について本年度作成のバーチャル環境を用いた作業実験と知覚応答計測による検証を進めることで,前述の自己主体感と自己所有感の相互関係の一般化と高精度化を図り,随意動作と自動動作をシームレスに接続する自在制御の設計論の構築を試みる.
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Research Products
(7 results)