2016 Fiscal Year Annual Research Report
Multiagent Automated Negotiation Theories and their Evaluations
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15H01703
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 孝行 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50333555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 桂英 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00625676)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自動交渉 / マルチエージェントシステム / 複雑な効用関数 / 合意形成 / 複数論点効用問題 / 多者間交渉問題 / メタ交渉戦略 / 交渉シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人間の交渉や合意形成を計算機で自動代行実行し支援するためのマルチエージェントの自動交渉の理論を構築することにある。自動交渉理論において現実的な交渉空間を前提とした計算機上の研究は、研究代表者が中心となって開拓している。本研究では、研究項目を3つ設定し、効率の良く進める。研究項目1:新しい非線形効用空間モデルの提案、研究項目2:エージェントの交渉戦略の設計、分析、および評価、および研究項目3:交渉プロトコルの設計、分析、および評価の3つに分ける。
平成28年度は、主に、研究項目2と研究項目3、それぞれの評価用のシミュレータ開発を進めると同時にシミュレータの上で様々な交渉戦略の評価を行なった。特に,今年度得られた成果として,メタ交渉戦略の自動生成メカニズム,交渉の状況の評価指標としての対立度の提案,交渉戦略と効用情報の推定手法,及び,論点の依存関係のある場合の交渉手法の提案である.
具体的には,メタ交渉戦略の自動生成メカニズムでは,妥協関数のパラメータを既存のエージェントとの仮想ゲームを繰り返すことで調整することでナッシュ均衡となる交渉戦略を発見し,メタ交渉戦略を自動生成する.対立度に関しては,当該の交渉状況がどの程度合意を得やすいか及び不公平な状態になっているかを数量的に示す方法を提案している.また,多者間複数論点交渉問題に対して有効な階層分析法(AHP)に着想を得た交渉戦略と相手の効用情報の推定手法を提案した.さらに, 自動交渉を現実世界に適用させるために,交渉問題における論点数や,交渉に参加するステークホルダーの人数が膨大で,論点間に依存関係がある交渉問題でも合意案を発見できる再帰に基づく手法を提案し、提案手法が既存の手法では合意案を発見できなかった論点数100までの交渉問題に対して,最適な合意案を発見できていることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、以下の点について計画以上に進展した。(1)メタ交渉戦略の自動生成メカニズム:ここでは,妥協関数のパラメータを既存のエージェントとの仮想ゲームを繰り返すことで調整することでナッシュ均衡となる交渉戦略を発見し,メタ交渉戦略を自動生成する.ここでのナッシュ均衡は,Strict Nash Equilibriumを得ることが要求され,均衡に収束する場合には,与えられた全てのエージェントに対して優位なメタ戦略を得ることができる.一方で,均衡に収束しない場合の理論的解析は今後の課題である.(2)交渉の状況の評価指標としての対立度の提案:対立度に関しては,当該の交渉状況がどの程度合意を得やすいか及び不公平な状態になっているかを数量的に示す方法を提案している.(3)交渉戦略と効用情報の推定手法:多者間複数論点交渉問題に対して有効な階層分析法(AHP)に着想を得た交渉戦略と相手の効用情報の推定手法を提案した.階層分析法と同じような効用分析構造を仮定することで,相手の効用情報を推定することが可能になった.今後より厳密な理論化が重要である.(4)論点の依存関係のある場合の交渉手法の提案: 自動交渉を現実世界に適用させるために,交渉問題における論点数や,交渉に参加するステークホルダーの人数が膨大で,論点間に依存関係がある交渉問題でも合意案を発見できる再帰に基づく手法を提案し、提案手法が既存の手法では合意案を発見できなかった論点数100までの交渉問題に対して,最適な合意案を発見できていることを示した.論点間に依存関係がある交渉問題は非常に複雑で,効率的により良い合意案を探索する方法が今後もさらに期待される.(5)(1)から(4)以外にも,当初期待していなかった,多人数の交渉手法としての提携形成メカニズムの詳細化についてスマートグリッドを題材として研究を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
近年、社会システムにおいて設計者の異なる人工知能が多数出現した場合の適切な調整手法として自動交渉が特に注目を集めており(例えば、産業競争力懇談会COCN)、本研究で行われている自動交渉の手法はまさにそのコア技術となるため、今後さらに研究を先端的に進める必要がある。本研究では、研究項目を3つ設定している。研究項目1:新しい非線形効用空間モデルの提案、研究項目2:エージェントの交渉戦略の設計、分析、および評価、および研究項目3:交渉プロトコルの設計、分析、および評価の3つに分ける。
平成28年度までの研究を通して,各項目に関して重要な方向性を得た.研究項目1:論点間に依存関係がある場合の効用モデルと効率的な合意案の探索手法の提案.離散交渉空間上では、論点の依存関係を適切に捉え,効率的に合意案を発見するために,近似的な探索手法をうまく利用することで、現実的な合意案を時間内に探索する必要がある。研究項目2:既存のエージェントの戦略をベースにしたメタ戦略の自動構築。多数の他エージェントが存在する場合にそれらを上回る戦略を持つエージェントを自動生成できるかという内容である。今後はより原理的な分析とさらに応用的な方向性で進める。 研究項目3:交渉状況を分析するための数値的指標の提案。平成28年度は交渉状況の対立度合いという視点のみで数値的指標を作成した。今後いくつかの観点から交渉状況の指標を提案しそれらに基づく交渉戦略やプロトコルを提案する。 以上の研究の方向性の土台となるシミュレーションとして国際自動交渉競技会ANACがある。今年度から、学習機構や論理的議論なども競技会に取り入れられ、人工知能の各種の技術を総動員して取り組むことのできるテストベットとして展開しつつある。先端的な自動交渉メカニズムを研究し、さらに以上のようなテストベットで評価することで、実践的な自動交渉メカニズムの構築を進める。
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Research Products
(15 results)